第736話 「陰謀論」無くならないねぇ。

多少科学的な素養があれば、「そんなことあるわけなかろう」と気づくだろうと思うが、1/1の能登半島地震についても「人工的に起こした地震だ」という情報が流れたそうだ。


地震で放出されるエネルギーの大きさを考えれば、そのエネルギーをたかが「人間」ごときがそれを左右できるはずもない、と思うのだが、SNSの一部ではそのような情報が流れていたらしい。


実際に人工的に起こした地震がどの程度のエネルギーを必要としたのか、少しネット検索をしてみた。莫大なエネルギーを生み出すもの、として思いつくのは「核燃料」だと思われる。


人工的なイベントで起きた地震のエネルギー量を調査した論文が検索された(「験震時報(2017)第81巻 1-6:武藤 大介」)。それと、Google検索で、広島型原爆のエネルギー量を確認した。核爆弾の威力はTNT(トリニトロトルエン)爆薬の重量で表記される慣習があり、広島型原爆は約16キロトン、とのことだった。


文献では、地下核実験で誘発された人工地震で最大のものはマグニチュード6.9が観測された、とのことだが、この際に使用された核爆弾は約5メガトン使用されたそうである。広島型原爆が約300個同時に爆発すると、その程度の人工地震が発生しそうである。今回の能登大震災ではマグニチュード7.4が記録されているので、0.5の差がある。マグニチュードが0.5増えると、エネルギー量としては5.6倍となるようなので、広島型原爆約1500個分のエネルギーである。そのようなエネルギーをいったいどこから持ってくるのだろうか?


今回は断層型地震のようだが、これまで未知の断層から発生したそうである。誰も知らない断層に相当量の核爆弾を仕込んで地震を起こすのか?どう考えても無理があるだろう。


地震の被害に対して、国からヤマザキパンに依頼があり、被災地にパンの供給を全力で行なっているそうであるが、ヤマザキパンに対しても「ヤマザキパンは添加物だらけ。人口削減のためにパンを運んでいる」という怪しげな情報が拡散したようである。


これまた、冷静に考えればおかしな話である。ヤマザキパンがパンをばらまかなくてもすでに急速な勢いで「人口は減少」しているのである。小学校でも学習する人口ピラミッド、日本の人口ピラミッドは明らかにいびつな形をしている。高齢者が多く、若年者がどんどんと減少している形である。生産年齢層を超えた世代が多数を占め、生産年齢層の生産物の世代間搾取が起きているわけである。「人口ピラミッドを正常化」するために「高齢者を削減」ということなら、日本国の将来を考えるならまだ行なう意味があるかもしれない。しかし、パンをよく食べるのは生産年齢層や若年者の方が多かろう。その世代を「減少」させる意味は何だろう??「日本」という国の維持を考えるなら、明らかに誤った行動であろう。それを実行させる、というように考えるのが「陰謀論」の「陰謀論」他る所以なのだろう。


関東大震災の後、「在日朝鮮人が暴動を起こす」という流言飛語が飛び交った影響で多くの在日朝鮮人の方が辛い経験をされた。時代は変わっても、「冷静に考えれば明らかに『変だ』と気づく流言飛語」が飛び交うのである。一番最初に、そのような情報を発信する人は、いったい何を企んでいるのだろうか?よくわからないところである。

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