第723話 あのギターは、やはりあなただったのですね。

ジョン・レノンのソロアルバム2枚目”Imagine”。有名な”Imagine”が入っているアルバムなので知名度も高い。ビートルズ解散後、間もない時期のアルバムなので、ポール・マッカートニーの「癖」である、時に「目を開けたまま寝てしまう」ことなどをなじった曲“How Do You Sleep?”も入っていれば、ビートルズのドキュメンタリー”Get Back”でセッションをしていた曲、また、いわゆる「佳曲」と呼んでも良い美しい曲が入ったアルバムである。


高校時代に私は初めて命の底から人を好きになったが、ちょうどその時の自分の想いと共鳴した曲の一つに、このアルバムに入っている”Oh My Love”という曲がある。


「愛しい人、生まれて初めて私の眼は見開いた。生まれて初めて、私の目が見えるようになった。・・・すべてのものが、私の中ではっきりと理解できた。・・・」という歌詞である(ネットを探せば、歌詞も曲も出てくると思います)。


この曲を聞いたときに、歌詞の内容と、私の感じていたことがあまりにも同じで、思わず涙を流してしまったことを覚えている。ジョンのアルバムは、基本的にヨーコへの愛で貫かれているが、その中でも、ファーストアルバムの”Love”とこの曲は、本当に強く私の心を打ちぬいた。


この曲は、イントロがとてもやさしいギターで始まり、そのあとピアノが重なって曲に入っていく。


ビートルズ解散直後の4人の関係は、ドキュメンタリー”Get Back”を見るとよくわかるが、簡単に言えば、「ビートルズのリーダー」であるはずなのに、「ビートルズ」よりも「ヨーコ」を優先するジョン・レノン、バラバラになりつつあるビートルズを何とかまとめようと頑張るポール・マッカートニー、ビートルズ成立時の人間関係のまま、お子様扱いされ、また、「完璧主義」のポール・マッカートニーに強い反感を持つジョージ・ハリスン、4人との関係を保ちつつあるが、壊れつつあるビートルズをどうにもできないリンゴ・スター、という姿が見える。特に、もともと大の仲良しだっただけに、ジョージとポールの対立は強く、大きく見ると、ポール対他の3人、という関係で解散に至ってしまった。後にジョージとジョンも関係が悪くなってしまうのだが、解散直後は、まだ関係性は悪くはなく、アルバム“Imagine”にはギタリストとしてジョージ・ハリソンを呼んでいた。


数日前にYouTubeで、スタジオで”Oh My Love”を録音中のミュージシャンたちを録画した映像が公開されていて、たまたま私の目に留まった。


動画では、あの優しいイントロのギターを弾いていたのは、やはりジョージ・ハリスンだった。


この曲のイントロのギターは、ギター初心者でも弾けるほど簡単なフレーズである。だが、曲にすごく雰囲気が合っていて、弾いていて心に「ジーン」とくるフレーズである。


ジョージは技巧派のギタリストではないが、このような心に沁みるギターを弾くギタリストである。


画像を見て、「あぁ、あのイントロのギターは、やはりジョージだったんだなぁ」と思った次第である。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る