第707話 50歳からの”Crossroad”

という表題のYouTube画像を最近見た記憶がある。この“Crossroad”は、Mr.Childrenの曲ではなく、1960年代に活躍した、エリック・クラプトンも所属していたバンド The Creamの曲である。原曲は、1920年代のブルースシンガー、ロバート・ジョンソン。彼が、交差点(Crossroad)で、悪魔と取引をしてブルースの才能を手に入れた、という伝説がある。


そのような曰くのある曲であるが、エリック・クラプトンはロバート・ジョンソンを愛聴しており、彼の曲“Crossroad Blues”をクラプトン流にブルース・ロックとした名曲である。


この曲を初めて聞いたのは20代前半だったように記憶している。とにかくギターソロがかっこよい。当時は、高校時代のクラシック・ギター部を引退して数年だったので、「楽譜とエレキギターを手に入れて、少し練習すればひけるようになるだろう」などと甘く考えていたが、エレキギターを手に入れたのも30を過ぎてからだったし、実際に弾いてみると、その時点で、ギターを真剣に弾かなくなってから10年以上が立っており、とてもではないが歯が立たなかった。イントロの一部が何となくそれらしく弾ける程度だった。


それから真剣に練習したか、と言われると、これまたそういうわけでもなく、とにかく仕事が忙しかったので、ギターを弾く「気力」さえ残っていなかった。週に120時間近く働き(もちろん当直をしている)、週休半日、なんていう生活を10年以上続けていたわけで、「どこにギターを練習する時間があるねん」状態であった。


現職に移り、夕方早めに帰宅することができるようになり、この半年ほどか、帰宅後すぐ入浴して、風呂から出てから午後7時(この時間に夕ご飯)までの間、ある程度集中してギターを練習することができるようになった。


ギターを弾くうえで、基礎練習は重要である。高校時代にクラブで毎日練習していたクロマチック練習(1フレットずつ上がっていく練習は「ムシ(虫)」、4フレットずつスライドしていく(指が4本なので、4本押さえると、次のポジションにスライドする)練習を「ネズミ」と呼んでいた)を前述のように2種類、そして一つのポジションで弦を上下に移動していくクロマチック練習(縦ムシ)を5フレット基準と、15フレット基準で行ない、そのあとは徐々にテンポをあげてスケール練習(5弦3フレットから始まるハ長調と、5弦12フレットから始まるイ長調)を行なって、それから自身の課題曲として、Deep Purpleの”Smoke on the Water”と“Highway Star”のギターソロ、The Beatlesの”You Can’t Do That”のギターソロ、”I Feel Fine”のリフ、“Octopus‘ Garden”のイントロとギターソロ、”Let It Be“はシングルカットされた曲と、アルバムの曲でギターソロが違うのだが、その両方など、Jimi Hendrixの”Castle Made of Sand”のイントロ(楽譜通りに弾いているはずなのだが、全然雰囲気が出ない(泣))、そして、The Creamの”Crossroad“の練習を始めた。


ちなみに、同時にアコースティックギター(フォークギター)も練習しており、こちらはビートルズ、S&G、ボブ・ディランなどの曲を弾き語りしている。


50歳ではない、52歳からの“Crossroad”である。


基礎練もきっちりしているので、ずいぶんといい感じになって来た。この曲はギターソロが2か所あるのだが、最初のソロの16小節はほぼ完成。ただ、2番目のソロが結構手ごわい。なぜだか、暗譜がうまくできず、暗譜で弾いていると詰まってしまう。楽譜を見ながらだと何とかなりそうなのだが、2番目のギターソロは32小節分あるので、途中で楽譜のページをめくり、そこで流れが止まってしまう。ポリリズムになっているところが多くて、しかも同じようなフレーズなのに16分音符5つと6つのパターンがある、など、自分の中での完成度は6割程度である。


ギター少年の多くが憧れる曲であるが、おっさんとなると、やはり難しくなってくるのであろうか。


そんなことを思いながら、仕事から帰ると急いで風呂に入り、そのあとギター練習に励む日々である。

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