第637話 こんな気持ちで歌うことになるとは…。

以前にも書いたことだが、転職して、毎日自宅で家族と夕食を取ることができるようになり、人間的な時間に就寝できるようになり、時間的な余裕もできてきたおかげで、若いころの趣味だった、ギター、10 Holes Harp(ブルースハープ)の練習をしよう、という気持ちが出てきた。


今でも複数の抗うつ薬を飲みながら生活をしているが、以前楽しんでいた趣味であっても「何かをしよう」と前向きな気持ちになることは、病状が改善していることを意味している。


さて、私にとって、ギター+ブルースハープ、といえば、“Bob Dylan”が真っ先に浮かぶ。数年前に氏はノーベル文学賞を受賞したが、その功績としては、初期の反戦・プロテストソングの存在が欠かせないと思う。


代表曲“Blowin’ in the Wind”(邦題「風に吹かれて」)は、たくさんのアーティストにもカバーされている名曲であると同時に、非常にシンプルな曲でもある。いわゆる「スリーコード」で作られており、歌詞も覚えやすい。覚えやすいが、非常に深い歌詞でもある。


そんなわけで、好んで演奏しているのだが、ウクライナの問題に加えて、「ハマス・イスラエル」の問題が起きた。


“How many times must a cannon ball fly before they forever banned?”

“How many deaths will it take till he knows that too many people have died?”


という1960年代初頭に書かれた歌詞が、今も私たちに問いかけ続けている。


そして私は歌っている。


“The answer , my friend, is blowin’ in the wind. The answer is blowin’ in the wind.”と。


イスラエルーパレスチナの問題は非常に根深く微妙であり、下手に議論することはできないのだが、少しだけ。


現在、世界の情勢としては「ハマス」は「テロリスト」というのが西側諸国の訴えるところであり、イランをはじめとするイスラム諸国は、「ハマス」サイドにたつ、という図式が成り立っている。宗教的に、「ユダヤ教」vs「イスラム教」の対立、となっていることの反映だろうと考えている。


2005年に、イスラエル政府と、PLO(とその一部であった「ハマス」を含む)の間で和平交渉が成立した。2006年にそれを破ったのはイスラエルである。そこからまた、「血で血を洗う」抗争が再発したのだ。今回の出来事だけを見れば、「ハマス」はテロリストかもしれない。では、イスラエルに本当に正義はあるのだろうか?


短期的に見ても、苦労に苦労を重ねて何とかこぎつけた和平交渉を、イスラエル側が壊したわけである。憎悪と憎悪の対立、血で血を洗う戦闘。本質的に、ユダヤ教の神もイスラム教の神も、キリスト教の神も同じはずなのだが、おかしなところである。


為政者や指導者は、「宗教」の壁を越えて、「人と人が憎しみあい、殺しあっている」現状を「現状」として認識してほしい、と思っているのは、私が「仏教徒」だからなのだろうか?


「友よ、答えは、風に吹かれている」のだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る