第634話 こんな企画を放送するとは…。

いつものごとく、車に乗っているときは、NHK総合ラジオをかけている。今日の夕方は、大阪ローカルの番組で、かつて関西に存在した球団の応援歌を流していた。


かつては関西に4球団存在していた。阪神タイガース、阪急ブレーブス、南海ホークス、近鉄バファローズである。


私が子供のころは、関東には、読売ジャイアンツ、日本ハムファイターズ(10年ほど前に北海道に移るまでは、ジャイアンツと同じ、後楽園球場が本拠地だった)、ロッテオリオンズ、ヤクルトスワローズ、横浜大洋ホエールズ、そして、西鉄ライオンズがクラウンライターライオンズを経て、所沢に西武ライオンズとしてやってきた。


関東に6球団、関西に4球団、後は名古屋の中日ドラゴンズ、広島の広島東洋カープ、これで12球団になるか。


実際のところ、西鉄ライオンズも私にとってはリアルタイムではない。なので、東映フライヤーズとか、国鉄スワローズとかは、私にとっては「昔話」であることを了承いただきたい。


記憶の残る小学生から、高校生になるころまでは、このような状態である種「安定」していた。


大きな変化があったのは、確か私が高校2年生の時だったと記憶している。阪急ブレーブスがオリックスに、南海ホークスがダイエーに「身売り」となってしまった。


私の友人には、阪急ファンも、南海ファンもいた。鉄道が走っている地域を反映していたのかどうか、定かではないが、二人の反応は大きく異なっていた。


阪急ファンの友人は、芸術科目として「美術」を選択していたので、その学年での制作物を「ポスター」として、「ありがとう、さようなら、阪急ブレーブス」というポスターを作成していた。


一方、南海ファンの友人は、「球団売却」のニュースが出た日に、学校をサボって球団本社に殴り込みをかけに行ったそうだ。当然、同じようなことを考えるファンはたくさんいたようで、その日のニュースになっていた。


翌日、友人に聞くと、球団本社から、普段学校から帰宅する時間に合わせて自宅に帰ったそうだ。そのころは、民放では18時からがニュースの時間だったので、テレビをつけてニュースを見ていたところ、自分の姿がデカデカと放送されていたらしい。「アワアワワ」と、夕食の用意をしていた母親に見えないようにごまかしたそうだ。


そして夕食を終えると、両親から、「あんた、ちょっと来なさい」と呼ばれたそうだ。


「あんた、今日、ちゃんと学校に行ったの?」

「うん、普通に学校に行ってきたで」

「ほんまやな?」

「ほんまやで。」

「ほんならあんた、この写真は何?」


と両親に問い詰められ、目の前に、その日の夕刊が出された。その一面には、球団本社前で腕をあげて声をあげているであろう彼の姿が、ばっちりと写っていたそうだ。その後、20分ほど説教されたそうである。


話はそれから10年以上たち、私が医学生時代のこと。例年、春と秋の2回、全学年対象のソフトボール大会が行われていた。私の運動神経は致命的に悪いのだが、いい友人たちに恵まれて、友人たちとほぼ毎回、チームを作って参加していた。それだけ毎回参加しているので、「何かチーム名をつけよう」という話になった。みんなで意見を出して、つけた名前が近鉄バファローズにちなんで、「貧血バファローズ」という名前に決定した。その辺りの経緯は、「保谷君の医学生時代(保谷君外伝)」の第25話「貧血バファローズ」に書いている。


ちなみに私の背番号は、「-1/3・i」である。なので、わがチームは背番号順に整列することができない(笑)。私の研修病院は近鉄沿線だったので、「本拠地に戻るぜ!」と言って卒業した。


阪急ブレーブスを引き継いだオリックスは、当初「オリックスブレーブス」を名乗っていたが、その後チーム名を変更し、「オリックスブルーウェーブ」となった。イチロー氏がいたころである。その後、近鉄バファローズを吸収し、「オリックスバファローズ」となった。近鉄バファローズの選手で、オリックスに残れなかった選手を中心として、紆余曲折があり、「楽天イーグルス」が誕生した。


南海ホークスはダイエーが引き継いだ。ダイエーも発祥の地は大阪なのだが、球団は福岡に本拠地を置いた。福岡は、ライオンズに去られ、ホークスがやってきた、ということになった。


長年低迷していたホークスであったが、私が医学生時代にリーグ優勝を果たした。日本シリーズのチケットも何とか入手でき、福岡ドームに応援に行った。グッズ売り場では、背番号90の「景浦」選手のジャンパーを探したが、残念ながら連携していなかったのだろう。おいていなかったのは残念だった。もし置いていれば、絶対売れていただろう。私も財布の中身を全部はたいてでも購入したかった。


球場では、ダイエーホークスの旗に交じって、南海ホークスの旗もたくさん振られていた。親会社が南海であれ、ダイエーであれ、ホークスファンの長年の夢だったのだろう。


今は、北海道にファイターズ、仙台に楽天イーグルス、千葉に千葉ロッテマリーンズ、後楽園はジャイアンツ、神宮球場にはスワローズ、所沢にはライオンズ、横浜スタジアムにベイスターズ、名古屋にドラゴンズ、関西にはタイガースとバファローズ、広島にはカープ、福岡にはホークス、と子供のころに比べると、ずいぶん散らばったように思う。


今はなき球団の応援歌を聞くにつれ、そんなことを思い出した次第である。

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