第633話 エコノミークラスで移動する大統領

長文の引用、大変申し訳ない。ソースはABEMA TIMES、Yahooニュースより


<以下引用>

 富山県高岡市の角田悠紀市長らが9日からアメリカを訪問予定。前回訪問した11年前は全員がエコノミークラスで旅費は1人あたり31万円だったが、今回はビジネスクラスに格上げで旅費は1人あたり183万円と、前回の6倍にアップするという。


石須大雄市議は「ただでさえ高岡市は財政難で、市民のサービスを削り不便をかけている。経費節減と言っている首長がビジネスクラス、これはおかしい」と疑問を呈した。


これに高岡市・角田悠紀市長は「どうしても11年前と比較されると『エコノミーだったのがなんでビジネスなんですか?』となるんですけど、そもそもの入り口が違うので。今回、遊びで行くわけではなくビジネスであると思っています」と主張している。


市民の声を聞いてみると「もったいないお金の使い方」「税金を納める者としては納得しかねる」といった意見が寄せられた。


国際政治学者の舛添要一氏は「私が東京都知事のときにファーストクラスで行ったと叩かれたが、逆にそれで行かなかったら、メチャクチャ馬鹿にされて。『そんな田舎町から来たのか』言われちゃうんで。好き好んでやっているわけではないじゃないだけど、そういうところを叩いてくる」とコメント。


そのうえで「反論するならば市長さんは『この差に見合っただけの仕事をちゃんとやってきます』と(明言すべき)」と仕事内容で納得させるべきであり、エコノミーで行くことによる疲労や、馬鹿にされ相手にされなくなることのマイナスも含めて議論すべきだと語った。


<引用ここまで>


ウルグアイにかつて、「世界一貧しい大統領」と称された大統領がいた。ホセ・ムヒカ氏。反政府組織に参加し、実際に政府軍から銃撃されたり、投獄されたりした人である。


氏は大統領に選出後、粛清人事を行なわなかった。彼のいた組織を散々攻撃したウルグアイ国軍に対して、何も触れず、大統領選の対立候補を副大統領として登用した。安定した政治運営で経済成長をもたらし、これは賛否あるところではあるが、「麻薬カルテル」の資金源となっていた「大麻」を合法化することで資金源を断つことができた。


彼の愛車は、友人から安価で譲ってもらったVolksWagen type1(初代ビートル)。大統領になった後もその車を使い続け、中東の石油王から、「そのワーゲンを約1億8千万円(本当はドル表記でしたが、数字を忘れました)で譲ってほしい」と申し出を受けたときには、「譲ってくれた友人に申し訳ない」とその申し出を断っている。


彼は国会議員や大統領としての収入の90%以上を寄付に使い、自身はつつましい生活を送っていた。


ウルグアイの「大統領専用機」も売却して国家予算に充て、自身は国際会議の際にはエコノミークラスで移動するか、近くの国の大統領にお願いして、他国の大統領専用機に乗せてもらって帰ってくるのが常だったそうだ。


「他国の大統領専用機に乗せてもらって」と書くと、少々厚かましい雰囲気が出ないわけではないが、現実としては、そこで首脳同士の会談が行われるわけで、「非常に効率的」でもある。あまり関係の良くないメキシコと、国連で侃々諤々の討論を行なった後、彼は、メキシコの大統領にお願いして、メキシコの大統領専用機で帰っていったそうである。


さて、人々は、この不屈で、許容力のあり、国の経済の安定化を果たした大統領を、「中古の自動車に乗り、小さな家に住み、エコノミークラスを使って国際会議に来る」という理由で、軽んじたり、バカにするであろうか?


舛添要一氏の発言、「仕事内容でその価値を評価すべきだろう」、という事は正しいと思うが、都知事時代に「エコノミークラスで行ったら、めちゃくちゃ馬鹿にされて、「そんな田舎町から来たのか」と言われてしまって」とのくだりは、私が関西の人間で「見栄より実利」をとる環境の中で育ってきたからかもしれないが、「実にくだらない」と思ってしまう。


エコノミークラスで来たことを馬鹿にされるなら、バカにされればよかろう。何なら、それでこと(「笑われること」ではない)ができればOKである(「大阪人の血」か?)。「そんな田舎町から来たのか」と言われれば、「そのとおり!400年以上の歴史を持つ東京は、2000年近い日本の歴史の中では、かつてはおっしゃる通り辺境の地であったのだ」と言ってやればよい。


身なりや出身で人をバカにする人は、その程度の人である。どんなところにも、無名ではあるが高潔で尊敬すべき人格の人がいて、そういう人は結局周囲の信用、信頼を得るのである。


町が財政難で苦しんでいるわけであろう。ビジネスクラスを使う必要がある、と本気で思うなら、出張費はエコノミークラスで公金を支払い、差額は「自分持ち」とすればよかろう。「身銭を切らずに」そういうことをするから非難されるわけである。


「前回と今回は入り口が違う。前回とは違い、今回はビジネスである」と言うなら、前回は「遊び」のために公金を支出してアメリカに行ったのか?それはそれで問題だろう?それに、「相手がビジネスクラスで来るのか、エコノミークラスで来るのか」、それを一流のビジネスマンたちは常に意識しているのであろうか?


今回の高岡市の言い分といい、舛添要一氏の発言といい、少なくとも私の感覚とは合わないなぁ、と思った次第である。

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