第623話 理屈では「あり得ない」技なんだけどなぁ。

YouTubeで、10 Holes Harmonica(ブルース・ハープ)の演奏法の動画が結構充実しているので、改めて練習し直している。基本テクニックとしてのブローベンド、ドローベンドがある程度しっかりできるようになったのは大きいように思っている。ただ、技として「オーバーブロー・ベンド」については、いまだにできない。この技は技の理屈からして不自然な技である。


ハーモニカで音が鳴るメカニズムは、それぞれの穴に「リード」という小さな金属がついていて、その穴に息を吹き込んだり、穴から息を吸い込むと、空気の流れでリードが振動し、音が鳴る、という仕組みになっている。


「ベンド(“Bend”)」は「曲げる」という意味の英単語で、息の吸い方、吹き込み方で、リードの振るわせ方に変化を与えて音の高さを変える(落とす)技である。ベンドでは半音~1音下がる(3番の穴のドローベンドは半音、1音、1音半と吸い分ける)のだが、ブロー(吹き込む)ベンドでは吹く方のリード、ドロー(吸い込む)ベンドでは、吸う方のリードの震え方が変わるので、そういう点では不自然ではない。


しかし、「オーバーブロー・ベンド」は息を吹き込んでいるのに、吸う方のリードから1音半高い音を出す、というある意味理屈を超えた技である。


普通にハーモニカを弾いているときは、息を吸い込むと、吹く方のリードが「吸い込む力」で閉じて「音を鳴らさなく」なり、吸い込む方のリードから空気が入って音が鳴る。吹くときは逆で、息を吹き込むと吸う方のリードが閉じ、吹く方のリードから空気が出ていき、リードが鳴る、というメカニズムである。


なので、「オーバーブロー・ベンド」は、息を吹き込んでいるにもかかわらず、吹く方のリードを鳴らさず、吸う方のリードを鳴らす、という、本来のハーモニカのメカニズムを超えた奏法になる。


とはいえ、動画ではそれで実際にプロが音を出しているので、実現可能であるのは確かである。しかしハーモニカの構造を考えると、音が鳴るメカニズムとして「モヤモヤ~」としてくる。


動画解説では、「ブローベンド」を強くかけていくと、吹く方のリードから音が出なくなる(リードが閉じた状態になる)、そしてそのまま続けていくと、吸う方のリードから音が出てくる、ということらしい。


実際にやってみると、ブローベンドをかけて、吹く方のリードが閉じるところまではいくのだが、その先が進まない。考えてみれば当たり前だ。息を吹くときには、吸う方のリードは閉じているようにハーモニカは作られているからである。


「音が鳴らないだろう」と思ってやっているから鳴らないのか、何か私の気づいていない、息を吹き込んでいる状態で吸う方のリードから音を鳴らす「コツ」があるのか、その辺りは不明だが、最初にこの技を見つけた人、単純にすごいなぁ(技術的にも、発想的にも)と思う。


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