第622話 Crossroad

ありがたいことに、今の職場で仕事をするようになってから、「自分の時間」を持てるようになった。当直は免除されているし、基本的には定時勤務(とはいえ、出勤日は1~2時間のサービス早出をしているが)である。夕方~夜の時間がある程度確保されており、気持ち的にもようやく、「趣味」の時間を取ることができるようになった。


目下の趣味は「ギターとハーモニカ」である。以前どこかで、3種類のギター(エレキギター、アコースティックギター(フォークギター)、クラシックギター)の話を書いたように記憶しているが、ハーモニカ(ブルース・ハープ)のこともあり、主にエレキギターと、アコースティックギターを弾いている。


YouTubeの動画を見ていると、バンド演奏の中で、クラシックギターをピックで弾いている、というものを時々目にするが、個人的には「それはやめてほしいなぁ」と思っている。早いパッセージを弾くには、指で弾くよりもピックで弾く方がずいぶん楽なのだが、クラシックギターの特性でもある「音色の豊かさ(甘く柔らかい音も、硬めでピシッとした音も出すことができる)」を求めるなら、ピックでは無理である。


ある意味「ギター」の基本でもあるので、本来は「クラシックギター」でも基礎練をするべきなのだが、おさぼりしている。


高校時代、クラシックギター部に所属していた時の基礎練を、毎日エレキギターで続けている。残念ながら、医学部専門課程~つい最近までギターを弾くことがほとんどなかったので、いわば「50の手習い」である。それなりに指が回るようにはなって来たが、早いパッセージはなかなか厳しい。


エレキギターは初期研修医2年目か、後期研修医1年目かに購入した、FERNANDESの"zo-3“シリーズであり、いわゆる「おもちゃ」的ギターと、本格的エレキギターの中間、みたいなものを使っている。それでもそれなりに楽しんで弾いている。購入した時には、Jimi Hendrixの”Purple Haze“なんかを弾いていたが、最近は弾かなくなった。エレキギターを購入した時から、定番曲の一つであるDeep Purpleの”Smoke on the Water“を弾いていた。最近も、まずこの曲のギターソロから練習を始めているが、どうしても16分音符の速いパッセージが美しくない。原曲ではRitchie Blackmoreのソロは、16分音符も音の一粒一粒がくっきりしていて、自然に流れていき、パッセージの速さを感じさせないのだが、私がそのパッセージを弾くと、決壊したダムのように、音はダダダと流れていくが、一粒一粒がくっきりしていなくて、締まりなく、あせったような感じのパッセージとなってしまう。右手と左手のつながりが悪いのだろうと思いつつ、なかなか「弾けてはいるが、美しくない」状態から脱出できないのが辛いところである。


初期のThe Beatlesで、難しいギターソロの一つが、“You Can’t Do That”のソロである。医学部入学前に、「初期ビートルズ」の演奏シーンを集めたビデオが発売され、それを購入して、しょっちゅう見ていた。医学部時代の住まいはカビがひどくて、そのビデオテープにもカビが生えて再生できなくなり、泣く泣く処分したのだが、そのビデオの中では、John Lennonがギターソロを弾いていたことを覚えている。かっこよくて、それなりに早いパッセージなのだが、これは1週間ほど気合を入れて練習し、何とか様になるようになった。


ビートルズのギターソロで難しい曲の一つは、「Taxman」である。実際にこの曲、George Harrisonが作った曲だが、ギターソロがうまく決まらず、Georgeが弾いても様にならず、Johnが弾いてもパッとせず、Paulがやっと素晴らしいギターソロを弾いた、というエピソードのある曲なので、やはり雰囲気を出すのが難しい。この曲のギターソロも練習していたが、今はちょっと「お休み中」である。


“Smoke on the Water”と同時に、The Eaglesの”Hotel California”のギターソロも練習した。こちらはミュート(余分な音を止める)がもう少ししっかりすれば完成だ、と思っている。かっこよくて切ないギターソロである。


今、気合を入れて譜読み中なのが“Cream”の名曲、“Crossroad”である。バンドである“Cream”よりも、そのギタリストであった“Elic Clapton”の曲、として有名だろう。曲そのものは高校生のころに初めて聞いたことを覚えている。ギターソロのかっこいい、熱い曲である。当時は「エレキギター」そのものを持っていなかったので、「こんなの弾けたら、かっこいいだろうなぁ」と思うだけであった。この曲も譜読みを始めて2週間くらいだろうか?イントロと、第一ソロはなんとなく目鼻がついてきた印象である。Elic Claptonは弾きながら歌っていたそうだが、それはさすがに無理そうである。あと、第二ソロ、指板の狭いハイポジションのソロで、運指が難しい(スペースがない)。もう少し第一ソロの完成度をあげれば、第二ソロの譜読みを始めよう、と思っている。


アコースティックギターは、今はハーモニカ曲のために使っている印象である。以前にも書いたが、主にBob Dylanの曲を弾いていることが多い。以前から“Don’t Think twice, All right”や”The Girl from North Country”は弾いていたが、レパートリーを増やしている。


あと、曲によっては「間奏」の楽器をブルース・ハープにすることも試している。The Beatlesの曲なら、“You’ve Got to Hide Your Love Away”のエンディングのフルートをハーモニカで代用したり、忌野清志郎氏の「スローバラード」のイントロ、アウトロ、間奏のピアノを、ブルース・ハープで代用したり、The Rolling Stonesの初期の曲“Route 66”の間奏をブルース・ハープにしたり、と工夫して楽しんでいる。


音楽を演奏することは、ストレス軽減にもなるし、脳にも刺激を与えることだろう。あとは、「一緒に弾いてくれる仲間」を見つけられれば、なおさら良いのだが、そこが大きな問題かもしれない。

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