第613話 「言霊」と、一時的な「放送禁止用語」

「大阪人の魂」と大きく括るのははばかられるが、それでも、大阪人の生活に密着しているものの一つが「阪神タイガース」の動静である。中学・高校時代も、「タイガースの勝ち負け」で翌日の機嫌が変わる教師がいたことを覚えている。


とはいえ、決して大阪だからと言って「タイガース一色」ではない、と言っておきたい。小学生の頃の友人は巨人ファンだったし、小学校低学年のころまで現役だった「王 貞治」選手は幼いながらに私もリスペクトしていた。目立つわけではないが、大阪にも「タイガース」以外の球団のファンはいるのである。


閑話休題。今年はタイガースが強い。なんとマジック1が点灯してしまった。他地域では有名になっているのかどうか不明であるが、タイガースのマジックが点灯するころから、一時的に、とある言葉が、各放送局で「自主的に?」放送禁止となったようである。大阪のタイガースファンはどこかで「言霊」であったり、ジンクスめいたことを信じているのだろう。ちなみにその禁止ワードは、マジックが減ってくるたびに近づいてくる「アレ」である(私も自主規制(笑))。


1985年、18年ぶりの「アレ」では、勢いづいたファンが、戎橋近くのケンタッキー・フライド・チキン(以下KFC)の店頭にある、「カーネル・サンダース」の人形を、当時活躍した「ランディ・バース」氏に見立て、胴上げした挙句、道頓堀に放り込んでしまった(バースを道頓堀に放り投げるなんて、罰当たりなことを…)。


その後、残念なことに、潜水夫を雇って捜索しても、人形はなかなか見つからず、タイガースは低迷が続き、「カーネル・サンダースの呪い」などと言われていた。ちなみに、カーネル・サンダース人形はその後、10年近くか、それ以上経って無事に発見された。


と、そんなわけで、その言葉を使うと目の前から逃げていく、と多くのファンが考えているのだろうか、各放送局(テレビ・ラジオを問わず)、関西地区では一時的に「放送禁止用語」としているようである。


昨日もタイガースが勝ち、2位(広島カープだったかな?)が負けたため、とうとうマジック1となった。そんな今朝のNHKラジオ。全国ニュースの合間に、ローカルニュースが挟まれる。どうもNHK大阪放送局でも、「アレ」は自主的放送禁止用語としているようだった。


「では、今朝の関西のニュースです。…(中略)…タイガースのマジックが「1」となりました。今日タイガースが試合に勝つか、あるいは負けても2位広島の結果次第では『アレ』となります」


と「アレ」を連呼していた。さすがのNHKでも、ローカル局では「自主規制」するのだなぁ、と驚いた。


私自身は、亡父、継父ともタイガースファンで、子供のころはタイガースファン、医学部進学後は、「九州」という事もあり、当時の「ダイエーホークス」を応援していた。ホークスの応援歌は、「カラオケ」で歌詞が出れば歌える、と思っているし、「六甲おろし」は今でもそらで歌える。とはいえ、研修医になると、「野球」を見る暇もなく、どの球団にどんな選手がいるかもわからなくなったので、野球熱はすっかり冷めてしまった。


数年前に妻から、「一度くらい子供たちを連れて、野球場で野球を見ようよ」と誘われたので、


「そやなぁ、大阪ドームでオリックスvsロッテ、とかやったらいいかもなぁ」と答えたことがある。基本的に混雑が嫌いなので、その組み合わせなら空いているかなぁ、と思って答えたのだが、たまたまそのカード、その時のパリーグの首位決戦だったようで、チケットが取れず、お流れになったことを覚えている(ファンの方、すみません)。


まぁ、とにかく「アレ」である。悲願の「アレ」が叶ったら、もう「アレ」と言わなくてもよくなるのかなぁ?と思っている次第である。

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