第612話 大阪府内でも「交通難民」が

去る9/11、大阪府南東部にある、富田林市、太子町、河南町、千早赤阪村でバスを運行している「金剛自動車」が、本年12/20をもって「路線バス事業」の撤退を表明した。


同地域のバス輸送はほとんどがこの「金剛バス」が担っており、同社がバス事業から撤退するとなると、太子町、河南町、千早赤阪村には鉄道がとおっていないため、同地域の公共輸送手段がなくなってしまうことになる。


太子町、河南町には「ニュータウン」と呼ぶのが適切かどうかは難しいが、いわゆる「新興住宅地」が存在しており、その点でも同地域の公共交通機関としての「路線バス」の存在は大きいものである。河南町は市内を巡回する「コミュニティーバス」を運行しているが、この拠点も「金剛バス」のバス停が担っており、コミュニティーバス→金剛バス→鉄道、という流れとなっている。


そんなわけで、同地域にとって、「金剛バス」の撤退は非常に大きな「痛手」となる。公共交通機関が無くなるからである。


「金剛バス」の事業撤退も、これまた厳しいものである。COVID-19の流行で利用者が減少し、赤字運営が続いたことも理由の一つであるのと同時に、「バス運転手」不足のため、現行の路線を維持できない、という事が最大の理由だと報道されていた。何しろ、バス運転手 17人で14路線を維持しているらしい。とんでもないことである。これでは運営が土台無理である。COVID-19流行前は運転手は30人ほどいたらしいが、「人員削減」をしたのかどうか、については報道やネット情報でも情報は手に入らなかった。


昭和の時代に流行した、吉幾三氏の「おら東京さ行くだ」の歌詞「バスは一日一度来る」どころではない話である。この地域の人たちと、鉄道をつなぐ公共交通機関が無くなるからである。しわ寄せは交通弱者である学生と老人にやってくる。


そんなわけで、金剛バスに依存している4市町村と金剛自動車で幾度も話し合いがもたれ、「補助金」の話なども出たそうであるが、会社側としては、「赤字うんぬんよりも、運転手不足で路線を維持できない、という事が最も大きな問題」という事で撤退を決めたという事である。


大阪南部を中心に営業している、「南海バス」と「近鉄バス」に、4市町村から「路線バスの継承」をお願いしているそうであるが、同社とも人員不足が大きく、「仮に路線を引き継ぎ、補助金を出してもらったとしても、運転手不足のため大規模な減便は避けがたい」という認識だそうだ。


日本国内で人口第3位、離島を抱えているわけでもない大阪ではあるが、それでも、路線バスの維持が「困難」な地域が出現したのは悩ましいところである。


私の住む大阪北部も状況としては似たようなものである。大阪最北部の豊能町、能勢町も、厳しい地域である。豊能町には鉄道はちょっとだけ走っており、二つの国道に沿って集落がある。しかし、この二つの国道の接続部は京都府、あるいは兵庫県となり、豊能町内で移動しようとすれば、とんでもない山道を通らざるを得ない。


能勢町には鉄道がなく(能勢電気鉄道、という会社があるにもかかわらず、豊能町どまり)、能勢町に、ある程度整備された道路でアクセスしようとすれば、兵庫県、あるいは京都府からアプローチしなければならず、どちらも「大阪府」でありながら、アクセスがなかなか厳しい地域である。


閑話休題。金剛バスの路線継承がうまくいき、地域住民の足が安定して確保できればいいのだが、と心から思う次第である。

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