第600話 そこ、問題にされていないけど、おかしくないかい?

ソースは朝日新聞デジタル。Yahooニュースより。他の新聞社でも同様の記事が掲載されている。


<以下引用>

 大阪府摂津市が2018年、市内の男性に本来より約1500万円多く住民税を還付した問題で、市は1日、全額の回収を断念したと発表した。約550万円は回収できる見込みとしている。 


市によると、18年4月に市の担当者が、男性の住民税の控除額を端末に誤って入力。約166万円のはずが、約1668万円と1ケタ多くしていた。約1年後にミスに気づいて返還を求めたが、男性は「使ってしまい、返還できない」と答えたという。  


市は男性を提訴し、大阪地裁は21年10月に過払い分約1500万円の全額を返還するよう命じた。その後も交渉を続けたが、男性は22年に破産を申し立てたという。


市は「道義的責任」を理由に、森山一正市長と奥村良夫副市長の給料を3カ月間、2割減額する条例改正案を、6日に開会する市議会定例会に提出する。


<引用ここまで>


この記事のコメントを見ると、多くの人が、誤入力した職員の「責任」などという意見を寄せているが、私には、いくつか引っ掛かるところがある。


一つは、「住民税の控除額が『正しくは』166万円」というところである。控除される金額が「166万円」ということは、本来はそれ以上の住民税を払っていたわけである。私の税金の知識が乏しいので、単純な話となるのは許していただきたいが、「分離申告課税」という形では株式配当の5%が住民税となるので、仮に還付額が全て「配当控除」だとすると「3200万円」の損益があった、ということになる。レバレッジ(「てこ」の意。信用取引で、自分の所有するお金以上の取引をしている状態)をかけてなかったとするなら、所有する株式は非常に大きなものである可能性が高いと思われる。


給与所得で考えると、住民税は10%なので、住民税166万円を「払う」必要のある方は、給与年収として1660万円もらっている人、ということである。


つまり、住民税を「166万円」払える人、と考えても極めて収入の高い人である。しかも今回は「166万円」取りすぎていました、ということで本来なら「166万円」の返金があった人である。であれば、支払っている住民税はそれよりもさらに大きな金額を払っていると推測される。そう考えると、もともと「とんでもないお金持ち」である。


「民間医局」のホームページから、同社が算出した勤務医の平均給料を確認したが、男性の勤務医の平均値は約1450万円(平均年齢46.8歳、平均勤務年数8年)となっていた。私の年収も、平均値からそれほどずれているわけではない。私が昨年度の収入を基に確定申告を行なったが、還付金は6万円ほどだった。それを考えても、「正しければ166万円」が還付される人、というのは相当の資産家だのでは?と想像できる。


誤還付を受けた方は、「還付された金額は使ってしまって無い」と主張していた、とのことだが、勘違いしてはいけないことは、いわゆる一般庶民が「降ってわいた1500万円」をいろいろな支払いに使ってしまった、という話ではない可能性が極めて高い、ということである。


これは推測だが、おそらくこの方が支払っていた税金は、毎年数千万円近いものだったのだろうと推測する。それに、「1500万円」を日常生活の中だけで使い切る、というのは難しい話でもある。例えば、そのお金で「高級車」を購入したのであれば、「市側」はその車を差し押さえに来るだろう。土地とて同様である。「飲食」で使おうとしても、そうそう使い切れるものでもない。


「立って半畳 寝て一畳 天下とっても二合半」ということわざがあるが、「毎食」高級料理では飽きてくるであろう。なので、「使ってしまって無い」ということは、そのお金をおそらく「ビジネス・投資」に回したのではないだろうか?


なので、誤還付が起きた2018年、そこから、裁判やらなんやらをして、この人が「自己破産」を申請した、という2022年の間に、「自己破産」しても「自分の資産」が守られるように準備をしていたのではないか、準備ができたので「自己破産」を選択したのではないか?というのがもう一つ引っ掛かるところである。


元々がそれほどの高収入であれば、誤還付が起きる前から、「資産管理会社」を持っておられてもあまり不思議ではないと思うのだが。


あくまで、推測の話なのでご容赦いただきたいのだが、この件で、あまり注目されていないが、私が個人的にびっくりしたことは、「住民税の控除額が166万円」ということである。この人、どれだけ税金を払っていたのだろう、と純粋に驚いたことである。それだけのお金持ちが、裁判を起こされ(当然被告側も弁護士をつけるので、その費用も支払うことができたのだろう。民事裁判では「国選弁護士」はつけられない)、法廷闘争を行なえたわけである。


いずれにせよ、モヤモヤした次第である。

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