第595話 まだまだ続くの~。

最近になって、新聞でも報道されるようになった「医薬品が足りない」状態。実際には、2020年度より起きており、もう2年近く、臨床の現場では「薬が足りない」「薬が出せない」状態が続いている。一つの薬が供給のめどがつけば、今度は別の薬が入手困難、という綱渡り状態を2年以上続けている。


今朝の読売新聞の記事で、ジェネリック医薬品大手メーカーの「沢井製薬」の社長が、同紙のインタビューに答え、「どのメーカーも大幅に増産できる体制になく、解消には2~3年を要するのではないか」との見通しを示した。


この件に関してはこれまでにもいくつか報道されており、「後発薬(ジェネリック医薬品)」は、薬価が低く抑えられており、「どのメーカーも今ある生産能力で薬を作るのが限界で、設備投資などにお金を回せないため、生産量を現状より増やせないのが問題、と指摘されている。もちろん、杜撰な仕事をしたために、営業停止処分を受けたジェネリック医薬品会社もあり、様々なものが複合しての「医薬品不足」ではあるが、記事を読んで「まだこれが数年続くのか~」とがっくりした気分になったのが正直なところである。


一番困っているのは、「これまでたくさんの患者さんに使われ、素性の分かっている(よく出る副作用などが分かっている)、明らかに効果のある薬が供給されなくなる」ことである。得てしてそういう薬は安価である。COVID-19の流行で、アセトアミノフェン不足が続いているが、アセトアミノフェン、1錠7円しないのである。ここまで値段が下がると、生産にかかわるコストや人件費は価格に反映されていないことになる。ほぼほぼ原材料と薬剤作成のためのエネルギー費用でおしまい、である。妊婦さんやbabyちゃんには欠かせない薬が、国によって「この値段」と決められている。


おそらく抗生物質としては最も使い勝手の良いものの一つに挙げられる「セフトリアキソン」も供給不足に陥った。これも薬価としては、メーカーによっては1g 246円とのこと。おそらくこの薬で命を救われている人は毎年日本だけでも何十万人といると思われるが、これも、おそらく「原材料」+「製薬工程にかかる費用」くらいで、「人件費」や「設備投資」などへのお金に回せるほどの儲けは出ないだろう、と思われる。


医療費が財政の大きな負担となっていることについては否定できないが、どこかで「安かろう、悪かろう」とならざるを得ない水準まで金額を削られているわけである。


「病院」や「クリニック」に対する診療報酬も決して多くない。カルテ記載を極限まで削り、患者さんをスピーディーにどんどん数をこなしていって、ようやく「建物の家賃」「スタッフの給料」などなどをかろうじて出せる程度の報酬である。


金をかけるべきところには、お金をかけよう。国会議員の文書交通費を給料とは別に月100万円払って、このような政治レベルなのであれば、アセトアミノフェンの薬価を20円くらいと破格に上げたほうが、国民、企業のためになると思うのだが、如何なものだろうか?

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