第593話 二人とも、何やってんだ!

気づけば高校野球も終わり、8月も終わりに近づいてきた。長男君は高校での補講(「成績が悪いため」というわけではなく、「受験対策」としての補講)、次男君はギリギリ夏休みの宿題の「帳尻」を合わせて(粉飾決算?)、今日から新学期が始まった。


二人とも寝坊をせずに起きたのは立派である。長男君は「朝型」なので寝坊の心配はほとんど無用なのだが、次男君はいわゆる「普通」の高校生。起こさなければいつまでも寝ているので、心配であった。


二日前に次男君の学校から、保護者宛に「始業式で必要なものを、貸与しているタブレットから確認させてください」とメールが来ており、


「あんた、必要なもの、ちゃんとそろってる?登校日に「雑巾がいる~!」とか言われても用意できないよ」


と声をかけておいた。


「大丈夫、ちゃんとそろってる!」


との答え。本人が言うのだから、もうヤイヤイ言う必要はない。


朝は各自で用意して食べる。お弁当が必要な日は、「お弁当用おかず」を多めに妻が作ってくれて、それを食べるのだが、今日は妻から「お弁当お休み」と前もって伝えられていたので、各自が冷蔵庫を探って朝ご飯を済ませた。


ちなみに私以外の家族は、朝は「ご飯派」、私だけが「パン派」なので、私については、いつも、私が自分で用意している。


家を出る時間が近づき、各自お出かけの用意をしていると、長男君が


「あれぇ?俺のベルトがない!」


と言って、ベルトを探し始めた。朝の貴重な時間にものを探すのは大変である。数分探し、


「もう時間がないわ。ベルトは帰ってから探す。着ていく服、ちょっと変更する」と言って着替え始めた。朝から何やってんだか…。


その様子を見ながら次男君も着替えていた。次男君の方が先に用意できたみたいで、


「ほな、行ってくる」

「行ってらっしゃい、気ぃつけてな」


と言葉を交わして、彼は家を出た。長男君も、大急ぎで服を着替えて、


「ほな、行ってくる」

「行ってらっしゃい、気ぃつけてな」


と言って送り出す。


二人が出かけた後、洗いかごの食器を片付け、食洗器に食器を入れ、シンクの排水口に付けているネットを取り換えて、ゴミ出しを済ませた。洗濯かごの洗濯物を洗濯機に放り込み、指示に合わせて、洗剤、漂白剤、柔軟剤を入れて洗濯機を回した。


あぁ、やれやれ、と思っていると、急に玄関が「ドンドンドンッ!」と。慌てて玄関を開けると、次男君が息を切らせていた。


「駅に着いたところで、財布がないことに気づいた。慌てて帰ってきた!」とのこと。


「場所は分かってんねん。ここに…、あれぇ?無いわ。じゃぁ、こっちかな」と慌てて財布を探している。


おいおい。忘れ物がないか、確認しておくように言っていただろう。玄関には「出かける前のチェックリスト」も貼ってある。もう、チェックリストは「風景」と化して、当たり前すぎて注意を引かないんだろうなぁ。


「あかん。財布無いわ。帰ってから探す。今日は(定期券ではなく)お金で学校に行く」と言って貯金箱から必要なお金を取り出した。そして、


「父、駅まで車で送って!」と。


そりゃ送らないわけがないよ。でも、財布なんて当たり前のように身に付けているものじゃないか?長男君のベルトも如何かと思ったが、次男君の財布、あかんやろう!


妻はまだ就寝中だったので、開放していた掃き出し窓を閉め、すぐに車を用意した。この時間帯は、メインルートであるバス通りは混んでいるので、2,3回信号待ちをすることになりそうである。もう一本の道は、途中に一方通行があるので、駅から自宅に戻るのはスムーズなのだが、その一方通行のため、家から駅に向かうには使えない。その部分をバイパスしなければならない。なのでその分空いており、うまくその道を使えば、駅には早く到着できる。


次男が車に乗り、事故に合わないよう注意しながら出発。途中まではメインルートを通り、途中から入り組んだ道を抜けて、前述の道に抜けた。信号もなくて、予想通り空いていた。


最短の時間で次男君を駅に送り届けることができた。朝から大慌てである。


二人とも、朝になって慌てないように、前日のうちに必要なものをきちんと用意しておこうよ。ほんまに・・・。(と、自分の昔の姿を忘れて文句を言う、悪い父である)。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る