第575話 自分の薬を自分で処方していただけじゃないの?えっ?違うの??

ソースは読売新聞オンライン。


<以下引用>

北海道雄武町が運営する町国民健康保険病院の桂巻正院長(64)が、別の医師から診療を受けたように装って処方箋を偽造し、医薬品を入手したとして、旭川地検紋別支部が同院長を有印私文書偽造・同行使と詐欺の罪で在宅起訴していたことがわかった。起訴は7月31日付。

 起訴状や関係者によると、桂巻院長は2021年3月26日~10月4日、7回にわたり、同病院に勤務する別の医師名義で虚偽の処方箋15通を作成して雄武町内の調剤薬局に提出、高血圧治療薬など約1800点を不正に受け取ったとされる。病院関係者が同10月頃、院長の電子カルテを見た際に不審な点を見つけ、不正が発覚したという。

 桂巻院長は10日、読売新聞の取材に在宅起訴されたことは認めたが、「取材には答えられない」と述べた。

 同病院は1951年に開院し、地域医療を支えている。現在の常勤医は桂巻院長を含めて2人しかおらず、今後の対応について町は「検討中」としている。

<引用ここまで>


詳細が省略されすぎていて、分からないことだらけである。「別の医師から診療を受けたように装って処方箋を偽造し」とあるが、「別の医師」はおそらくもう一人の常勤医であろうと推測される。では、いったい「誰の」処方箋を偽造したのだろうか?「桂巻医師」本人の処方箋なのか、全く他人の処方箋なのかで、話しは全く変わってくる。記者はそこに気づかないのだろうか?情報を削りすぎである。


もう一つ、「高血圧治療薬など約1800点を不正に受け取った」とあるが、この1800点は「保険点数」を指しているのか、「治療薬などの個数」を指しているのか、これもどちらを指しているのかで、話しが全然変わってくるポイントである。1800点が「保険点数」を指しているのなら、金額としては1万8千円、「とんでもない金額」ではなかろう。薬は普通「錠」などで表記するので、1800錠を指しているとは思えないのだが、仮に1800種類のものを処方していた、とすると変な話である。


当初、この記事を見たときには、「院長が、自分の定期薬を処方しただけじゃないの?」という印象を受けた。私は内科医なので、自分の内科的トラブル(例えば、頭痛がする、とか、おなかが緩いなど)で、薬が欲しい、と思っても、自分で処方することはできない。なので、同僚の先生にお願いして診察、処方してもらうことになる。ただ、外来中の医師は忙しいので、外来担当の先生に「先生、私が、頭痛でアセトアミノフェンを使いたいので、先生のサインをいただいてよいですか?」と、医師名のみ空欄の処方箋とカルテ(当院は紙カルテだからできることだが)を診察の合間に差し出し、適切な手順を経て薬を出してもらっている。勝手に他の先生の名前を書いたりはしない。


ただ、常勤医二人の病院で、毎日交代制で外来と訪問診療に出ている、というスタイルを取っていたり、二人の関係が極めて悪かったりすると、なかなか「先生、私の処方をお願いします」とはいかなかったのかもしれない、などという印象を受けた。


しかし、記事では7回の不正診療で15通の処方箋を作成しており、平均すると1回に2通の処方箋を作成していることになる。そうなると話はおかしくなってくる。


医師が自分で自分を診療することを「自己診療」、自分の家族や、自分の所属する医療機関の従業員を診察することを「自家診療」と定義されている。どの健康保険も、「自己診療」は禁止されているが、「自家診療」についての扱いは各健康保険によって変わってくるそうである。ただし、医師法に規定されている「無診察の処方は禁止」のルールを守って、適切に診察し、カルテに記載を行なうことが規定されているようだ。当たり前と言えば当たり前であり、自家診療であろうが、普通の診療であろうが、要求されていることは同じである。


過疎地の医療機関であり、「自家診療」を禁止すれば、職員や医師の家族は受診できる病院がなくなってしまう。ということで、おそらく自家受診は禁止されていないだろうと推測される。それでは、院長はわざわざ別の医師の名義で、「自分以外の誰」の処方をしていたのだろうか??


記事そのものが「雑」なものなので、正しいところは分からない。ただ、考えれば考えるほど、実は「大きな秘密」が隠されているように思うのは、うがった見方なのかもしれない。

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