第547話 ブルース・ハープ
私が子供のころ、幼稚園や小学校低学年では、音楽の授業で使う楽器として「ハーモニカ」が使われていた。ハ長調のハーモニカで、何曲か練習したことを覚えている。私の息子たちは「鍵盤ハーモニカ」を使っていたが、「ハーモニカ」の音に好感を持っているのは、子供のころの記憶が残っているからかもしれない。
それから10年ほど経った高校生の時、ビートルズにはまっていた私は、当時活動が盛んであったビートルズのファンクラブ「ビートルズ・シネ・クラブ」(「シネ」は映画のことで決してビートルズを罵っているファンクラブではない)が年に1回開催する「ビートルズ復活祭」という催し物に何度か参加したことがある。当時はなかなか見れなかったビートルズの映画を上映したり、ビートルズ関連グッズを販売する催し物だった。
個人的には、スクリーンの上で躍動する若い4人がまぶしいほど格好良くて、少ない小遣いを貯めて参加したことを覚えている。ビートルズグッズも、なけなしの小遣いで購入した。ある年は、上映映画は字幕のついた”A Hard Day’s Night”で、その時の記念グッズとしてアルバム”A Hard Day’s Night”のジャケット写真柄のハンカチを買って帰った。大切にしていたはずなのだが、今はどこに行ったのか、さっぱりわからなくなってしまった。実家も取り壊してしまったので、はてさて、どうなってしまったのやら?
ある年の「ビートルズ復活祭」では、ビートルズのデビュー曲”Love Me Do”でジョン・レノンが吹いていたハーモニカを「限定販売」というのが目玉だった。何とか参加費と、ハーモニカ代(確か2500円だったと記憶している。「会場価格」という事で値段を吹っ掛けなかったのは後々気づいたのだが、立派な姿勢だと思った)を手にして、売り場の前の混雑をかき分けかき分け、何とかハーモニカを手に入れたことを覚えている。
「限定販売」となっていたハーモニカは、ドイツのHonor社が販売する”Marine Band”という10穴ハーモニカだった。会場では「限定販売」と銘打っていたが、何のことはない、10穴ハーモニカとしてはとてもポピュラーで容易に入手できる代物だった。販売されていたハーモニカはC調で、これが10穴ハーモニカ、いわゆる「ブルース・ハープ」との出会いだった。
初期のビートルズにとって、「ハーモニカ」は一つの特徴で、世界的ヒットとなったセカンドシングル”Please Please Me”の爽やかで元気な印象は、あのハーモニカの音が色づけている、と思うほどである。実際にプロデューサーのジョージ・マーティンも、「あの曲はハーモニカが加わった途端に一気に雰囲気が変わった。絶対にヒットチャートに上ると確信した」と思わしめるほどであった。
ただ、実際にハーモニカを吹いてみると、「本当にMarine BandでLove Me Doを録音したのかな?」と思わなくもなかった。“Love Me Do”や“I Should Have Known Better”は、C調のハーモニカが使われているそうだが、どちらの曲も曲自体はG調で、どちらもハーモニカソロで1か所、ファ#の音を出さなければならないところがある。
ブルースハープの奏法の一つに「ベンド」と言って、音を半音下げる技法がある。吸気、あるいは呼気の勢い、角度を変えて音を変えるのだが、低音部は息を吸う音の、高音域は息を吐く音のベンドがやりやすい(ハーモニカの構造上の問題)。ところが、前述の2曲、どちらも、ベンドを要求されるのは、中音域の「吐く音」(「ソ」の音をベンドさせて「ファ#」にする)である。ジョンのハーモニカの腕前は、ボブ・ディランなどと比べると明らかに劣るのは、それぞれの曲を聴けばすぐに分かるのだが、そんなジョンが、ベンドしにくい「ソ」の音をきれいにベンドさせているのかな?というのが、実際に吹いてみての感想である。半音階が出せる「クロマチックハーモニカ」を使っていたのでは?と思わなくもない。
それは横に置いておいて、実際にブルース・ハープを吹いてみると、それはそれで小さい頃の思い出がよみがえり、また、適当に吸ったり吐いたりするだけで、それなりの和音が鳴って、適切なコード展開で回っていくので、楽しかった。また小遣いを貯めて、首からかけるハーモニカホルダーを楽器屋さんで購入し、当時はクラシックギターしか持っていなかったので、ギターとC調ハープで、ボブディランのファーストアルバムの1曲目だった”She Is No Good”という曲や、舌が回らなかったが、同じアルバムの”Freight Train Blues”を弾いたりしていた。また、他の調のブルース・ハープも欲しくなり、少ない小遣いを貯めて、買いそろえていった。
閑話休題。そんなわけで最近、またブルースハープを吹き始めている。
A調のハープが吹きやすく、実際に私の好む曲もA調が多いので、A調の弾き吹き語りをしたりしている。
忌野 清志郎氏の「スローバラード」、個人的には名曲だと思っていて、原曲ではピアノが前面に押し出されたアレンジとなっているが、コードに合わせてテキトーにハーモニカイントロ、ソロを入れながらシャウトしている。
ブルースハープの弾き語り曲ではBob Dylanの曲をすることが多くて、有名ではない曲だがセカンドアルバムに収録されている「北国の少女」や、「くよくよするなよ」を引くことが多い。「風に吹かれて」も同じアルバムに入っているのだが、あまり弾くことはない。
以前「ペンタトニック」の話を書いたが、ブルースコードで、どんな感じかなぁ、なんて思いながら、ブルースハープを吹いていることも多い。
ただ、最初に話した、ハード・デイズ・ナイトのハンカチと同様に、集めたブルースハープの中で、一番最初に買ったC調のマリンバンドだけが現在、行方不明となっている。
子供たちがまだ幼稚園くらいのころだか、ハーモニカを吹いて遊んであげていたのだが、どうもそのころに失くしたみたいだ。いったいどこに行ったのだろうか???
まとまりのない文章ですみません。
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