第537話 ペンタトニック~!
このシリーズの最初の方、もう一年ほど前に、「ギター」の話をしたことがある。高校時代にクラシックギター部ですべてを捨ててギターを弾いていたこと、ビートルズやサイモン&ガーファンクルが好きで、弾き語りをしたりするのが好きだったことなどなどで、クラブ卒業以降は、「本気」ではないが、楽しみ程度にギターを弾いていた。
クラシックギターを弾くためにはある程度右手(弦を弾く方)の爪を伸ばさなければならない。ただ、伸ばした爪は手洗いの時に不潔になりやすい場所となってしまうし、患者さんの診察の時に患者さんに痛みを与える原因となることもあれば、打診をするときは自分の左指を爪の伸びた右手の指で叩くので、自分の指が痛い。以前の職場では、「ギターを弾く」余裕なんてないほど仕事に追われていたので、かなりの時間、ギターから遠ざかっていた。
今の病院で働くようになり、少し時間的にも、気持ち的にも余裕が出てきたので、再度ギターを弾き始めるようになった。爪もギターを弾くために少し伸ばしているので、患者さんの胸部や腹部などを打診するときは指が痛い。
「打診」なんてするの?と思われる方は多いと思われるが、結構役に立つ。腹部診察でお腹が張っているとき、腸管ガスがすごく溜まっていれば「ポンポン」と鼓音がするし、腹水ならあまり音がしない「濁音」がする。私の訪問診療中の患者さんで、胸水が溜まっている人がいるが、レントゲンを撮らずとも、打診をすれば、おおよその胸水の貯まり具合がわかる。という点で、「何となくあたりをつける」には結構役に立つのである。
私が持っているギターは3本。高校入学時に芸術の選択科目で「音楽」を選択した人がほぼ全員買わされた「クラシックギター」。学校購入で数がさばけるのだろう。3万円で購入したものだが、定価はもっとしていたものだろうと思う。高校時代の演奏会ではこのギターを使っていた(クラブのメンバーで音楽選択者は、みんなこのギターを使っていた。演奏会やコンクールで使っても恥ずかしくない音が出ていた)。30年以上たった今でもいい音を出してくれる。とてもハードケース付きで3万円とは思えない。とてもお買い得だった。
アコースティックギター(フォークギター)はハードケース込みで5~6万くらいだっただろうか?これもやはり20代前半に購入したので、30年選手であるが、しっかりと鳴ってくれる。ローポジションの弦高が少し低くなり、1~2フレットにカポタストを使うと、特に低音弦がビビるので専門店での調整が必要なのだろうと思いつつ、たぶんこのギターを使うことが一番多い。弾き語り、インストゥルメンタル(S&Gの“Anji”とか、中川 イサトさんの曲とか)などに使っている。
エレキギターは、後期研修医の時に、フェルナンデスの“ZO-3 ultima”というモデルを買った。これはソフトケース付きで8万円ちょっとだったと思う。ERの隙間時間に「エレキギターも欲しいなぁ」と思いながらネットを見ていたら、目に飛び込んでいたギターだった。15Wのスピーカーと高性能エフェクターが内蔵されているギターで、他のZO-3シリーズより少し大きく、普通のエレキギターと同じサイズのネックを持っている、という事でわざわざ"ultima”と名付けられたようだ。かつては“DIGI-Zo”など、エフェクターを内蔵しているZo-3をフェルナンデスは作っていたが、今はシンプルなZo-3と、トレモロユニットがついた「Zo-3芸達者」しかラインナップされていないのは残念である。
そんなわけで、その3本を私や子供たちが使って(最近は子供たちが受験生でギターを弾く余力がない)いる。エレキギターを買ったのは、Jimi Hendrixの“Purple Haze”を弾きたいと思っていたのだが、それは、レコード盤の方なら何となくなるようになった。ライブではギターソロがハチャメチャなので、とても私レベルでは如何ともし難い。“Castle Made of Sand”も練習中だが、持っている楽譜が正しくないのか、私の腕の問題か、何となく弾いていても少し違うように思う。
それはそれとして、エレキギターと、他のギターの大きな違いは“mute”という「弾いていない音を消す技法」を常に意識する必要があることである。アコースティックギターの感覚でエレキギターを弾くと、いらない音が残ってスッキリしない。そんなわけで、エレキギターの特徴を意識しながら練習をしている。
最近はYouTubeが充実していて、教則本を買う代わりに、教則画像を参考にして練習をしている。エレキギターを演奏していると、「アドリブを弾けたらかっこいいなぁ」という思いがわいてくる。今や50の手習い状態ではあるが、気持ちだけはギター少年と変わらない。
長調のスケール(ドレミファソラシ)から、ファとシを抜くと「ドレミソラ」の5つの音が残る。この5つの音を「ペンタトニック(ペンタ=5)」と呼ぶ。ギターソロのフレーズはこのペンタトニックを中心として組み立てられることが多く、いわばギターソロの「基本」となる。もちろん、このペンタトニックだけで素晴らしいギターソロが作られていることも多い。ビートルズの“Let It Be”、シングルver.もアルバムver.も、ギターソロはペンタトニックでできている。YouTubeの動画では、C majorのペンタトニック練習曲、として取り上げられているほどである。同じくビートルズの”While My Guitar Gentry Weeps”、ジョージ・ハリスンの名曲で、クレジットされていないがエリック・クラプトンがギターソロを弾いているが、これもペンタトニックでソロが構成されている。
ペンタトニックの意味、指の動きなどは問題なくできるのだが、これはセンスの問題なのだろう。自分が「アドリブ」で弾くと、とてつもなく「ダサい」。何でこんなにダサいんだろう、と思うくらいにダサい。
この「ダサさ」何とかならないものか?と思いながらギターを弾いている。
因みにこの「ペンタトニック」、「四七抜き音階」とも呼ばれ(ファは4番目、シは7番目)、日本の演歌はこの「四七抜き音階」で作られている。という点で考えると、洋楽のギターソロと、日本の「ザ・演歌」、同じ音階で作られていることが興味深いところでもある。だから音楽は面白いと思う。
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