第527話 マニュアルミッション車~~!

我が家の唯一の車はスズキ自動車の「ソリオ マイルドハイブリッド(先代型)」である。我が家、いや、私にとって「バイク」や「自動車」は優秀な「道具」だと思っている。つまり、走らせてナンボ、使ってナンボ、だと思っている。渋滞が大嫌いで、「裏道」をコソコソ走るのが好きなので、「デカい車」は極めて不便だと思っている。


いわゆる「高級車」は基本的に「デカい車」なので、必然的に私の選択肢からは外れてしまうことになる。メルセデスベンツの「ゲレンデヴァーゲン」は見た目や、あのタフさは好みなのだが、少なくとも日本の道路事情で乗る車ではない。ランドクルーザーや、レンジローバーなどもそうだし、いわゆる「ミニバン」も選択肢には入らない。


前述のように「道具」なので、車体に多少きずがついてもあまり気にならない車がいい。となると、高い車はストライクゾーンには入らない。5ナンバーの中でも車体は小さめで、それでも大人5人が乗れて、後ろに荷物を目いっぱい詰めこめる、という点で、スズキの「ソリオ」は及第点であった。


ソリオの前に乗っていたのもスズキ自動車の「MRワゴン(3代目)」だった。ちょうどスズキ自動車の軽自動車用エンジンが、高回転型ショートストロークエンジンから低回転型ロングストロークエンジンに切り替わった一番最初の車種だった。私が車を買うに至った経緯は、拙著「保谷君、町のお医者さんとして頑張る!」の第48話「車を買うまでの話」に詳しく書いたつもりだが、繰り返しになるが、私が車に求めているものは、「小回りが利くこと」、「人と荷物の両方をそれなりにしっかり積めて走ることができること」、「常用域できっちり『走る、曲がる、止まる』ができること」なので、後席に人が乗っていても、軽自動車としてしっかり荷物が積めるMRワゴンはいい選択だったと思っているし、今の「ソリオ」も及第点である。こういうところはスズキ自動車は「うまい」と思う。


うちの妻は「借金」「ローン」が大嫌いなので、車を買うときはいつも「現金一括払い」である。「ローンを組んで、余分に金を払わなければならないような高い車なら乗るな!お金をためて、即金で買え!」というので(それは本当にそうだと思っている)、わたしは、「奨学金」「住宅ローン」しか借金をしたことがない(もう全額返し終わった)。


閑話休題。そんないい車だが、ただ一つ、MRワゴンにも、ソリオにも気に入らないところがある。それは変速機が「CVT」である、ということである。「CVT」が嫌い、というよりも、オートマティックで、運転者の意思を「肝心なところで」くみ取ってくれない変速機が気に入らない。


もちろん、普段、普通に運転している限りにおいては、マニュアルミッション(以下MT)よりも、オートマティックミッション(以下AT)の方が楽である。アクセルを踏んで加速、あるいは一定の速度で走り、ブレーキを踏んで原則、停車するだけである。変速機に積まれているコンピュータが、エンジンの特性を把握しているので、アクセルをどれだけ踏んでいるか(開度)とエンジン回転数、速度を基に燃焼効率の良い変速比を勝手に設定してくれるので、こちらがあまりすることがない。


飛行機のオートパイロットと一緒で、安定して走行(飛行)しているときは「機械任せ」でいいのだが、飛行機なら離陸、着陸、非常事態のように、人の手で操作介入したくなる時があるように、車の運転でも、変速比をこちらで決定したい時がある。長い坂道でのエンジンブレーキ、交通量の多い交差点や、高速道路での合流など、「ブレーキを踏まずにブレーキをじんわり掛けたい」とか、「アクセル開度と加速度がリニアに反応してほしい」というときである。


最近の車は、スピードメーターの近くにあるマルチパネルからいろいろな情報が得られるようになっている。私は、力の流れを表示するようにしている。加速時、あるいは等速走行時(当然摩擦力があるので、等速運動をするためには、力を加えてあげる必要がある)は、エンジンから車輪に向かう矢印が表示される。今乗っているソリオはマイルドハイブリッドで、エンジンブレーキをかけているときは、エンジンの回転で発電機を回し、蓄電池に充電することになるので、車輪から電池に向けて矢印が向くようになっている。モーターがエンジンをサポートしているときは、エンジンと電池の両方から、車輪に向かって矢印が現れるようになっている。


ということで、状態を把握できるのだが、エンジンブレーキについては、しばしば、こちらが思うようにかからないことがある。下り坂でアクセルを離すと、たいていの場合は、それまでエンジンからタイヤに向いていた矢印が、タイヤから電池に切り替わるのだが、切り替わらずに、ずっとエンジンから車輪に向けて力が流れていることがある。この状態だと、エンジンブレーキはかからずに、駆動輪には常に力がかかり、CVTの変速比はどんどん小さくなっていく。具体的には、アクセルを離しても、エンジン回転数は低いままでどんどん加速していく、という状態になる。


エンジンブレーキをかけるためには


①オーバードライブ(以下OD)ボタンをoffにして、スポーツ走行モードにする、

②シフトダウンして、低速ギヤ(ソリオなら1速?)に入れる、


という方法がある。


いや、あるにはあるのだが、往々にして、その時にはどちらもあまりうまくいかない。時には、エンジンブレーキをかけて、速度を落としているが、もう少し強めのエンジンブレーキが欲しい、と思ってODボタンをoffにして、スポーツ走行モードにすると、車側が「よし!下り坂やけど、どんどん行け!と思っているんですね」とばかりにエンジンブレーキがoffになり、車輪からバッテリーに向いていた矢印がエンジンから車輪に向けての矢印に変わることもある。


内心、「ちっが~う!」と叫んでいるのだが、そういうところは融通が利かない。そういう場合はなぜか、シフトダウンをしても、エンジンブレーキはかからず、矢印はエンジンから車輪に向きっぱなし、ということが多い。「いや、この速度で、1速に入れて、アクセル放しているのに、なんであんた(ソリオ)、そんなに走る気満々なん?!」と突っ込みたくなることもある。


最近の車はブレーキ性能もいいので、そう簡単にフェードを起こしたり、ベイパーロックを起こすことはない、とわかっていても、思い通りにエンジンブレーキがかからないのはストレスである。


ブレーキは、まだフットブレーキを踏めば済むことなので(フットブレーキがだめになるほどの下り坂は、私の技量不足のため、経験していません)、まだましなのだが、急いで加速したい時に反応が鈍いのは本当に困る。


高速道路の合流であったり、交通量の多い道路に入っていくときなど、しっかり「強い加速」が必要なこともある。そういうときにもCVTはスカタンをすることがある。


トルクコンバータ+歯車式ATなら、「キックダウン」と言って、アクセルを「グッ」と踏み込むと、ギアが一段落ちて、加速力が強くなる、ということになっているのだが、CVT車では、「キックダウン」のつもりでアクセルを踏むと、変速比が上がりすぎて、エンジンは高らかにうなるのだが、加速は普通の1.2倍程度とエンジン音のわりに加速せず、「イライラっ!」とすることがある。こちらはもっと強い加速が欲しいのである。


これは前もって、1速ギアにしておいたり、オーバードライブをoffにしておけば解決できないことではないのだが、不意にそのような状況になると、そこまで頭が回らず、「ありゃりゃりゃりゃ…」ということになってしまう。何とか車線に入って、アクセルを緩めていくと、そこでようやくCVTが「あぁ、加速、加速」と認識して、アクセルを緩めているのに力強く加速していき、「ここじゃな~い!」と腹が立ってしまう。


AT車でもお金を出せば、最上級グレードにはパドルシフトがついていて、そういう場面でもストレスを感じないようになるのだろうが、「その不快感解消のために、ウン十万も追加で払うか?」となると考え込んでしまう。


私も年を取って来たし、次に車を変えるときは、MT車がいいなぁ、と思っているのだが、市販車の中でのMT車のラインアップ、どんどん減ってきている。個人的には今の車、あと4年乗るつもり(車検をあと1回は通すつもり)なので、4年後のことを視野に入れると、もうMT車は絶滅しているのではないか、と不安に思ってしまう。金額を払って、パドルシフトのついたクラスにするか、税金が加算されている古い中古のMT車を選ぶのか、ずいぶん先のことだが、結構悩んでいる今日この頃である。


いや、そのころには、BEVやHVばかりになってしまって、内燃機関をバンバン回して走る自動車はなくなっているかもしれない。でもそれは嫌だなぁ。


トヨタ自動車の、かの有名なドライバー「モリゾウ」氏が言っていたが、私も、「ガソリンくさくて、少し燃費の悪い、音がいっぱい出る車」が好きなのである。四輪車、二輪車にかかわらず、である。

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