第494話 その人、勉強不足なだけやん!失礼やな!

ソースはPRESIDENT On line、Yahooニュースから。


病理専門医、細胞診専門医の榎木 英介氏が寄稿した、PRESIDENT On lineの記事。表題に「医学生からは『キモい』と言われたことも…」とあった。記事の内容は、「病理医の仕事の重要性」「にもかかわらずなり手が少ない」ため人材不足である、というのが骨子だった。その意見には大いに賛成で、例えば悪性腫瘍(ガン)の手術。基本的には腫瘍を含む周辺を大きく切除することが多い。例えば、消化器癌、大腸がんでは病変の上下5~10cm程度を切除することが多い。切除した臓器標本は、速やかに凍結固定、染色が行われ、切除した部位の断端に悪性細胞がないかどうかを確認してもらう。術中迅速診断と呼ばれている。診断が下るまでの間、腸管は切除された状態で、手術を一旦停止。みんなで手を止め、病理部とつながっているスピーカーに耳をそばだてている。病理部から「断端陰性です」(切ったところに悪性の細胞はありませんでした、の意)と報告があれば、そこから切除した腸管の吻合のための手術が始まる。逆に「断端陽性です」とアナウンスがあれば、さらに追加切除を考えなければならない。乳がんであれば、「センチネルリンパ節」(センチネル:見張りの意味、センチネルリンパ節は、病変からのリンパ流がまず最初に集まるリンパ節)を生検し、センチネルリンパ節の転移の有無で、術式からして大きく変わるわけである。そんなわけで、「ガン」の手術と術中迅速診断とは切っても切り離せないものとなっている。


今の医学生のカリキュラムと、私たちが学生の頃のカリキュラムの組み方は大きく変わっていると思うが、病理学は「正常な組織像」を理解する「組織学(ミクロ解剖学)」を学ばなければわからないので、やはり学部3~4年次に学習すると思われる。病理学を学べば、「病理学」そして「病理医」のありがたみはとてもよくわかるので、とてもじゃないが「キモい」なんて思わない。尊敬のまなざしである。


かつて医学生がSNSで「病理医はキモい」と投稿し、それが騒ぎになったことがあったと著者は書いていた(私は知らなかった)。そんなことを言う医学生は不勉強である。


もちろん「病理解剖」も重要である。「専門医取得に必要だから」という理由だけでなく、「病理解剖をしてはっきりさせたい」という事も多いのである。残念ながら、日本では、「亡くなった人を傷つける」という行為を「良くないもの」として考えている習慣があるので、「ぜひ病理解剖をさせてもらい、病気の正体を明らかにしたいのです」とお願いしても、「いや、もう充分頑張ったので、もうこれ以上、身体に傷をつけたくないのです。先生のお願いはよくわかりますが、それが家族の気持ちです」と断られることがほとんどであったと記憶している。


まぁ、そんなわけで(どんなわけだ)、「病理医はキモい」と言っている医学生は大いに反省すべきだ、と思った次第である。「病理医はキモい」という表現を見出しに持ってくるのも、インパクトはあるが、ほとんどの医師や医学生はそんなこと、ちっとも思っていないので、やめてほしいなぁ、と思う次第である。

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