第485話 「チリン・チリン」と「方向指示器」

昨日、帰宅時に病院の玄関を出て、駐車場に向けて歩き出していると不意に「チリン・チリン」と背部から結構大きなベルの音が聞こえた。慌てて後ろを振り向くと、結構離れた距離に自転車に乗った高齢男性がいた。その人の「チリン・チリン」だった。


歩行している私たちへの警告か、と思ったのだが、自転車が私の横を通り過ぎても特に男性は気にすることなく自転車で進んでいかれた。様子を見ていると、交差点の中で「チリン・チリン」と鳴らしておられた。


「あぁ、自分の存在を、見通しの悪い交差点なので、ベルで知らせているのだなぁ」という事が分かった。私が後ろを振り向いたときも、確かに丁字路におられた。


しかし、私は考えた。「交差点の中で『チリンチリン』と鳴らしても、意味が無いんじゃないか?」と。


その男性は「明らかに」交差点に進入してからベルを鳴らしていた。歩いている道には、大通りに出るまで、2か所小さな交差点があるが、いずれも交差点内で鳴らしておられた。


「危険回避のためなら、交差点に進入前に鳴らさなければならないだろう」と思ったのだが、ご本人が、「そのタイミングで鳴らすのが適切」と考えておられるのか、「『交差点進入前に鳴らそう』と思っているが、うまくタイミングが合わず、交差点内に進入してしまっているのか」どちらなのだろうか??


本人に聞こうにも、ご本人はもうずいぶんと先に進まれてしまったので確認の使用がない。


前者であれば、考え方を変えなければリスクは減らせず、ただの「うるさいおっちゃん」である。後者であれば、「自転車に乗ること」そのものを考え直さなければならない。


いずれにせよ、困ったものだなぁ、と自転車が大通りを曲がっていくのを見ながら考えた。



私自身は、20歳からバイクに乗り始め、ほぼ30年間、毎日エンジン付きの乗り物に乗っている。運転していて、イライラすることの一つは、「他車の『方向指示器』を出すタイミング」である。


もちろん、ほとんどの方が適切に指示器を出されているのは了解しており、ごく一部の人の話、と聞いていただければありがたい。


教習所でも習い、道路交通法にも明記されているが、方向指示器を出すタイミングは、「右左折する交差点の30m手前から」か、「車線変更をする3秒前から」である。本質的には、「私、これから曲がりますよ、車線変更しますよ」という意思表示を前もってする、という事だと理解している。


方向指示器を出すことなく車線変更をしたり右左折する車やバイクがいるのは事実であり、こういった方には「何をかいわんや」ではあるが、車線変更や右左折と「同時」に方向指示器を出す人も結構多い。


個人的には「前もって」意思表示をすることが重要だと思っていて、曲がり始めてから方向指示器を出しても、「曲がっているの、見りゃわかるやん」と冷たい目で見ている。「周りの車両への前もっての意思表示」という視点を失った、独りよがりの運転だと思っている。


若いころはとてもイライラしたが、今では「アホやなぁ」と冷たい目で見ている。「運転」は車を操作するという事だけでなく、周りの状況を見て判断する「頭を使う」行為でもあると思っている。なので、そのような周りに配慮のない運転は好きではない。


なんてことを、交差点内で「チリン・チリン」とベルを鳴らすおじさん(おじいさん?)をみて思い出した次第である。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る