第474話 心打たれた「NHK番組」と「YouTube」
一昨日、寝る前にスマホでYouTubeをだらだら見ていたら、一つの動画が画面に出てきた。NHKの番組のまとめ動画(と言うのかな?エッセンスをまとめた動画)だった。
緩和ケア医の関本 雅子先生が、息子さんで同じく緩和ケア医で、肺癌を患い、亡くなられた関本 剛先生の看取りを追いかけたドキュメンタリーだった。
おそらくお二人の名前で検索を掛ければ、動画も出てくるし、番組紹介のNHKホームページも出てくるはずである(実際に出てきた)。
詳細は動画やホームページを見ていただければよいと思うが、私が強く心を打たれたのは、以下のことだった。
剛先生の病状が進行し、番組曰く「髄液の量が増えて」(おそらく水頭症を来たしたのだろう)意識を失った彼に、脳外科医は減圧術(おそらくシャント造設術と推測)を提案した。医師としての雅子先生は、「終末期の患者さんに侵襲的なことをするのは…」と思ったそうだが、母としての雅子さんは「これでもし意識障害が緩和するのであれば…」と思ったそうである。剛先生の奥様は手術を希望され、雅子さんも手術に同意された。
手術は成功し、「意識清明」とまではいかなくても、開眼し、言語でのコミュニケーションが取れるまでに回復したそうである。それから20日ほどで剛先生は永眠されたそうだが、雅子先生曰く、「一日一日が、輝く宝石のような素敵な日々でした」とおっしゃられていた。
このことは、「緩和ケア医」としての雅子先生の考え方にも大きな影響を与えたそうだ。それまでは「終末期に侵襲的な医療を行なう事は、「患者さんにつらい思いをさせるだけだ」と考え、反対だった」そうだが、このことをきっかけに、「終末期ではあっても、『姑息的手術』(姑息:「一時の間に合わせ」という意味。卑怯などネガティブな意味ではない)を行なった方がいい場合もあり、患者さんのどのステージであっても、侵襲的な治療の選択肢を含め、考えていくようになった」とおっしゃられていた。
もちろん、選択肢は場面ごとに異なり、同じ病状であっても、在宅なのか、当院のような「外科医」のいない病院なのか、高次医療機関に併設された「緩和ケア病棟」なのかで答えは異なってくるだろうと思う。しかし私もこの動画を見て、雅子先生と同様に少し考え方が変わった。もちろん、積極的に終末期の方に侵襲的な医療を行なうつもりはないが、それが数週間であっても、患者さんやご家族に「宝石のように輝く日々」を与えるものであれば、その選択肢を排除することはしないでおこう。あくまで考えうるすべての選択肢とリスク・ベネフィットを考えていこう、と感銘を受けた。
寝る前の子守歌代わりのYouTubeのつもりが、とても良い勉強をさせてもらった。NHK、いろんな批判はあるが、このようないい番組も作ってくれるので、個人的には受信料を払っても無駄ではない、と思ってはいる(あくまで私の個人的感想)。
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