第450話 だんだん孤独に。(忙しい土曜日シリーズ)

偶数週の土曜日は外来担当医は私一人である。平日の外来は2人の医師で外来を担当しているので、「もう一人外来に医師がいる」というだけで心強い(本当に重症の人が来て、私が身動き取れなくなっても、もう一人のDr.に外来で待っておられる患者さんの診察をお願いできる)のだが、一人で外来、というのは「何かがあっても助けてくれるDr.がいない」という点で、心細いものである。個人開業のDr.はその点で、常に「一人」なので大変だよなぁ、と思っている。


さて、土曜日に限らず、平日の外来でも、ペアになっているDr.の方がベテランで、定期受診の患者さんが多いことと、カルテ記載量が少ないこと、健診の患者さんのほとんどが、「受付患者数が少ないこと」を理由に私のところに回ってくること、初診の患者さんも同様の理由で私に回ってくることから、どうしても私の外来の方が時間がかかっている。平日も、受付終了時間を30分も超えると、診察が続いているのは私の外来だけ、ということがほとんどであり、私一人の土曜日では、受付終了時間から2時間近く診療が続くことがほとんどである。


ほとんどの医療機関がそうだと思っているのだが、「医師」は明確なタイムスケジュールがなく(というか、「開始時間」は決まっているが、「終了時間」は未定、ということ)、その場での仕事を終えるまで休むことなく仕事を続けることになっているのだが、看護師さんや医療クラークさんは、「休憩時間」が厳格に決まっており、時間が来れば、患者さんが山のように残っていても、「休憩に行ってきま~す」と言って、休憩に行かれてしまう。そんなわけで、午前診の受付終了時間が来ると同時に、外来スタッフの数が減ってくる。


診察室でのトラブルは様々なものがあるので、診察室には私一人だけではなくもう一人、女性のスタッフがいてほしい(患者さんの羞恥心の問題もあるし、「わいせつ行為を受けた」と言われれば、私の無実を証明してくれる人がいないことになる。そのような状況で、女性の診察をするのは避けたいのが本音である)のだが、気が付けば、診察室周りには私以外にスタッフが誰もいなくなっている。外来に残っている看護師さんは、午後からの診察準備に手を取られて、私が「診察」を続けていることを「忘れている」かのように感じられる。


まだ、診察は終わっていないのだから、油断することなくこちらの診察室にも注意を払ってくれ~、と思いながら寂しく、受付終了後2時間後くらいまで外来を続けているのが普通となっている。午後からの外来準備が忙しいのは分かるのだが、何かあったら困るなぁ、と思っている。

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