第446話 「機械」の寿命は突然に

冷蔵庫や冷房などの「何かを冷やす」機械は、5~6月ころに壊れることが多いらしい。特に冷蔵庫は、冬の寒い時期は、外気温も寒いので機械の能力が低下してきていることに気づかないまま過ぎ、暖かくなってきたころに「あれ、おかしいぞ」となることが多い、と聞いたことがある。


数日前、起床してリビングに降りてくると、お弁当を作ってくれていた妻が、「お父さん、なんか冷蔵庫がおかしいみたいやねん」と声をかけてきた。


曰く、お弁当用の保冷剤、いつもはカチカチに固まっているはずなのに固まっていない、冷蔵庫の中のものが汗をかいている(容器に水滴がついている)など、冷えなくなっているのではないか、とのことだった。前日、寝る前に冷蔵庫のお茶を飲んだが、よく冷えていたので大変驚いた。


最近の電化製品は耐用年数が10年程度とされているようである。先日扇風機を買いに行ったのだが、製品の横に「設計耐用年数」として、何年間機械が正常に動き続けるか、ということを表示してあった。安いものだと6年間、高いものでは12年間、というものもあった。


我が家の冷蔵庫は購入してから11年、「そろそろ寿命だね」なんて妻と話していたところであった。


この話は、「車好き」の人の間では有名なジンクスかもしれないが、「新しい車を買おうか?」という話を人にすると、それまで調子のよかった愛車が壊れてしまう、というものがある。


たまたま、先日養父の家に泊まった時、数年前にこの地域で起きた地震で、冷蔵庫も踊り出してしまい、冷蔵庫は転倒しなかったものの地下収納ボックスの蓋の上に冷蔵庫の足が乗ってしまい、地下収納庫が使えない、という話をしたのだった。


私が20代前半、医学生ではない大学生時代、養父の職場で長期休みに、アルバイトとして養父と一緒に働いていた。冷蔵庫は重いものであるが、3ドアの高さ180cmくらいの冷蔵庫なら、適切に梱包して紐掛けを行ない、ずれない持ち場所を作ってしまえば、私一人で担いで公団などの階段を下りていた(多分今なら椎体の圧迫骨折を起こすか、まず抱え上げられないだろう)。


そんな私でもてこずっている、という話をして、養父が、「じゃあ、段ボールをあそことあそこにかませて、この方向に力を入れたら何とか動くと思うよ」とアドバイスを聞いたところであった。冷蔵庫が動かせなくて困っている、と言ってしまった言霊のせいで、冷蔵庫が壊れたのかもしれない、と思ったりした(冷蔵庫を買い替えたら、わざわざ私が動かさなくても済む)。


とりあえず朝の時点では、まだ少し冷気が出ているようにも思えたので、


「やっぱり冷蔵庫壊れてたら連絡ちょうだい。仕事が終わったら新しいの買いに行こう。10年以上使ったし、寿命かもしれないものね」


と言って仕事に出かけた。


午前の仕事が終わり、スマホを確認すると「やっぱりダメみたいです」と妻からLINEが。「了解。仕事が終わったら連絡するので、冷蔵庫買いに行きましょう」と折り返した。


仕事を終えて帰宅すると、妻はクーラーボックスを出していて、そこに、何かの時に、ということで入れていた保冷剤、凍らせていた麦茶、残っていた氷をビニール袋に入れたものを用意していて、その中に冷やしておかないといけないものを詰める作業をしていた。


「ジャムは冷やさなくていい?」「ジャムは一応保存食やから、大丈夫やろ」

「梅干しは保存食やから置いといていい?」「最近のものは塩分控えめやから冷やした方がいいんちゃう?」


などと相談しながら、入れられるだけのものを入れて蓋を閉じた。お弁当のおかず用として購入していた冷凍食品は残念ながらその日のうちに食べてしまわなければならない。


そんなこんなで冷蔵庫の整理をして、「ほな、電器屋さんに行こか」ということで我が家御用達の電器屋さんに向かった。


妻は賢いことに、今使っている冷蔵庫の説明書を持ってきていた。説明書には冷蔵庫のサイズや容量が書いてあるので、新しいものを買うのに大いに助けになった。


店員さんに「冷蔵庫が壊れたので買いに来ました」と伝え、相談に乗っていただいた。説明書を見せると、「あぁ、このサイズなら、後継機はこれになりますね」と教えてくださった。我が家で使っていたのはH社の冷蔵庫だったのだが、後継機とはいえ、消えてしまった機能、新たについた機能などがあり、やはり進歩しているようだった。これまで使っていた冷蔵庫は、当時もそのサイズで一番人気だったのだが、冷蔵庫前面がガラスコーティングされていて、磁石がくっつかないのが難点だった。どうしても冷蔵庫には、「ストック切れ」のものや、「予定のメニュー」、その他のメモなどを貼っておきたいものであるが、それができなかったのが難点だった。今回のH社製のものは前面にも磁石がくっつくようになったようだった。


対抗馬としてはP社製のものだった。ただ、内部の作りは今使い慣れているH社製の方が当然のことながら似ており、妻と相談の結果、少しお高めだがH社製の冷蔵庫を買うことに決めた。結構大きなサイズなので、冷蔵庫のダウンサイジングも考えたのだが、一応食べ盛りの高校生の息子二人がいるので、「ダウンサイジングはしない方がいいか」というのが夫婦の結論であった。


そんなわけで冷蔵庫を購入(泣)。懐に直撃である。配送は翌日、とのことだった。新品の冷蔵庫を購入して、電源をつけても、各部位が十分冷えるまでには半日~1日かかるとのことで、その間にゆっくりと物を詰めていかなければいけない、とのことだった。


電器屋さんから帰ると、「食べてしまわなければならない」山のような食材が待っていた。もちろん前述の冷凍食品もそうである。冷蔵のもの、冷凍のものそれぞれを家族で分担して調理(とはいえ、メインは妻が台所仕事を行ない、私たちは冷凍食品をチンするくらいだったが)。その日の食卓はとても華やかで、大量のものとなった。家族4人、頑張って食材を無駄にしないように頑張った。息子二人も「もうこれ以上食べられな~い!」というほどに頑張ってくれた。妻は食事の後で、まだ残っている食材を使って、少し日持ちのしそうなものを作ってくれていた。


その翌日には冷蔵庫が届いた。本来あるべきところに設置されており、「開かずの床下収納」も開くようになった(ものが入ってなくてよかった)。ただ、前述の通り、すぐに使えるわけではない。妻がタイミングを見計らいながら、冷え具合を見つつクーラーボックスの中のものを移していった。


そんなわけで、ご飯を作るのも大変だ、ということで外食とした。


今日は冷蔵庫はフル活動。冷蔵庫で冷やしている麦茶も、これまでより良く冷えているように感じる。懐には大打撃だったが、冷蔵庫が新しくなり、開かずの収納庫も開くようになってよかった。


ただ恐ろしいことに、炊飯器、電子レンジ、洗濯乾燥機、いずれも10年選手なのである。どうか壊れるなら、タイミングはバラけてほしい次第である。一度に壊れてしまったら、クレジットカード(その電器店のカード)の限度額を超えてしまいそうである。恐ろしや恐ろしや。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る