第445話 この加速感を繰り返し味わうには?

そんなわけで、継父の受診、入院手続きを終えた。翌日には私が仕事なので、受診を終えるとすぐに自宅に戻ることにしていた。継父に駅前まで送ってもらい、新幹線の券売機の前に来た。列車の表示を見ると、10分後にこだま号が、30分後にまたこだま号が来るが、これは私の目的地まで行かない。50分後にひかり号が来ることとなっていた。「ひかり」で帰るなら駅で1時間は時間を潰さなければならないし、自由席が少ないので、指定席を買った方が確実に座れるが、ちと高い。それに、1時間後のひかり号が、10分後のこだま号に追いつくだろうか?ということを考えて、大慌てで切符を買い、ホームに駆け上がった。


丁度ホームに駆け上がったところで、乗るべきこだま号がホームに入線してきた。いつも思うのだが、新幹線の「駅」への到着は、在来線のそれに比べて、ものすごく丁寧な印象がある。停止直前には本当にゆっくりと速度を落とし、決められた位置に停車する。


新幹線の運行は東京と新大阪にある(新大阪は東京が故障した時の予備)指令所ですべてコントロールされており、ATC(Auto Train Control system)と呼ばれるシステムで動いている。ATCがホームの停止位置までコントロールしているわけではないように記憶している(私の知識が古くて、今はそこまで制御しているのかもしれないが)。なので、運転士の技量と運転に対する姿勢なのだろう。在来線は、それに比べると少々荒っぽい感じがしないでもないが、いわゆる「都会」で、一時間に何本も列車が来るところであれば、可能な限り高速でホームに進入し、一気に止めないといけないのでしょうがないのであろう。


閑話休題。そんなわけでこだま号の自由席に腰を落ち着けた。こだま号は各駅停車だが、各駅ごとにのぞみやひかりに追い抜かされている。そんなわけで、腰を落ち着けてからしばらくすると、別の新幹線が追い抜いて行った。追い抜かれてから発車。こだま号は車内放送もひかりやのぞみに比べて少ない。気が付くとゆっくりと発車していった。


東海道新幹線はこだま号も、ひかりやのぞみと同じN700A系の車両を使っている。以前は最高速度の違う車両をこだまに使っていたので、それがダイヤグラム作成の大きな問題だったのだが、車両の性能が速達列車も各駅列車も同じになったので、ダイヤ作成は少し楽になったのかもしれない。


新幹線が脱線しては困るのだが、話が少し脱線してしまった。そんなわけでこだま号は発車し、ホームに接する待避線からゆっくりと本線に合流した。おそらく編成全体が本線に進入したのだろう。突然に列車はまるで何かに追いかけられるように(いや、後続の列車に追いかけられているのだが)、強力に加速を始めた。さすがN700A。結構な加速力で、あっという間に車窓からの景色はどんどん後ろに飛んでいくようになった。この加速力にはちょっと感動した。もちろん最高速度はのぞみやひかりと変わらぬ285km/h。どんどん走っていったが、15分ほど走ると、減速が始まった。そして、ホームのある待避線にゆっくり進入していき、停車する。


しばらく待つと別の新幹線に追い越され、その後は、また同じようにゆっくり本線に進入し、そのあと、強力な加速力で最高速に達する。


それを繰り返しながら、最寄りの新幹線駅にたどり着いた。1時間差のあったひかりは、この列車の2本後にまで接近していた。


確かにこだま号は退避があり、時間はかかったが、各駅停車である分だけ、N700Aが持つ加速力を堪能することができた。


こだま号を選択する理由がまた一つ増えたように思う。とはいえ、乗車時間は明らかにひかりの方が少なくて済む。どちらもどちらかな、という感じであった。


ただ、以前電車好きな子供たちを連れて、在来線のみで両親のところに行ったことがあるが、在来線と比べたらこだま号でもびっくりするほど早いのは確かである。

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