第401話 鉄橋下での肝試し。

今日の笑点、大喜利の第2問で、電車のガタゴト音を流し、「ガード下で商売をしている店主になって一言」というお題が出た。


私の実家は、私の子供のころは、「2路線にアクセス」という、パッと聞けば「交通至便」そうなところだったが、実際のところはどちらの鉄道駅に行くにせよ、歩くと30分、高校生時代の脚力で自転車で10分、一番近くのコンビニも、自転車で10分、という交通不便なところだった(平地であり、堤防に上ってわたる「橋」以外にはデコボコがないのは助かった)。


自分の小学校区ではないが、私鉄の最寄り駅に行く途中の道を少し折れると、私鉄のガードがあった。細い道に架かっている鉄橋で、高さは1.6m。電車が走ると、本当にすぐ頭の上で、高速で走る電車と、鉄橋を渡る「ガタンゴトン」という音が響いて、子供心にとても怖かったことを覚えている。


小学校高学年のころか、自転車で友達と「肝試し」と称して、そのガード下によく遊びに行った。時には何も知らない友人とに行ったりもした。


鉄道のレールは25mの長さで作られている。列車が「ガタンゴトン」と音を立てるのは、25mごとにレールの継ぎ目があり、その段差を車輪が通過するからである。ところが、最近の都心部の鉄道では、レールの敷設の際に25mのレールを溶接して、継ぎ目をなくしている。もともとは新幹線のレール敷設で使われ始めた技術である。気温によって、鉄は伸び縮みするが、25mレールを使っていた時代は、レールとレールの継ぎ目に適切な隙間を作っていたので「ガタンゴトン」と音がしていたのだが、長いレールであれば気温の変化で25mレールよりもさらに長さに影響が出る。なのでレールのつなぎ目も、斜めになだらかにつなげることで、音が立たなくなっている。山手線などの東京近郊の路線や、JR西日本の複々線区間に乗車してもらえば、「ガタンゴトン」という音がしないことに気づかれると思う。


とはいえ、私の子供のころはそこまで手が入っているわけではなかった。なので、電車が近づくと徐々にレールを介して音が近づいてくる。鉄橋の上を通っているレールに車輪が載ると、明らかに音が変わる。


「来るぞ!来るぞ!」と思っていても、頭上すぐ上を高速で列車が走り抜ける轟音は飛び上がるほどびっくりする。状況を知っている自分たちも驚くぐらいだから、何も知らない友人を連れていくと、最初は本当にびっくりしていた。「うぉ~、ビビった~!(怖くてびっくりした、の意)」と言っていたが、それから何度も友人たちと「肝試し」をしたことを覚えている。


今も、その鉄橋は1.6mのままで残っている。診療所時代は、その辺りまで訪問診療に回っていた。子供のころの車は、それほど背の高い車が多くはなかったが、今はミニバンなど背の高い車が増えたので、その鉄橋の下を通れない車が増えた。その辺りの地域は、その鉄橋をくぐれなければ、細い道をずいぶん走らないとその集落から出られないし、その集落に入れない。訪問診療の途中でその鉄橋をくぐるときに、背が高くて通り抜けられない車が苦労しているのを繰り返し見た。


鉄橋の下での肝試し、今となっては「アホなこと」と思ったりするが、あの頃はとてもスリリングで楽しかったことを覚えている。


懐かしい子供のころの思い出である。

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