第396話 法律家ではないので、よくわからないのだが。

3月の国会予算委員会は、いわゆる「小西文書」でずいぶんと荒れた印象を受けているのだが、3/23の「令和電子瓦版」というサイトで、小西氏の政治資金について不透明な部分がある、と指摘する記事が掲載された。また不透明な部分、として挙げられた会社の名前について、複数人が、その「会社名」を連呼するツイートを発信していた。


それに対して、小西ひろゆき議員は3/26付で「令和電子版と記者には刑事告訴を含め強力な法的措置を取ります。」「通常は捜査後の起訴について被害者の見解の確認がありますが、この間警告したもの等も含め、今回は一切容赦なく全員を起訴するように検察に求めます。」「突然、警視庁の捜査が始まるので、皆さん驚かれます。」「違法行為はしないでください。」とツイートされた。


法律家ではないので、よくわからないのだが、「令和電子瓦版」で提示された疑念については、その根拠として、「普通はASKULに注文したものは、「ASKUL」の名前で領収書が送られてくるのだが、「ASKUL」に注文したのに、その代理店名の領収書が届くことが不自然」という事らしい。ASKUL利用者はたくさんいるので、「『ASKUL』に発注したものの領収書が『代理店名』の名前で送られてくることはない」という声がたくさん寄せられていた。これについては「領収書の提示1枚」で疑惑が晴れるはずなのだが、小西議員は「そのようなものを提示する必要はない」と拒否されているそうな。それでいて、「刑事告訴を含め強力な法的措置を取ります」とのことだそうな。


「刑事告訴」というからには何らかの犯罪行為がなければならないが、いったい「政治家の政治収支報告書から推測される政治資金の不透明な流れ」を指摘したことについて、「どのような罪」に問われるのだろうか?このような報道は枚挙にいとまがないほど頻繁に行われているが、「疑惑を報道」という行為に対して処罰された、という事は少なくとも私の記憶にはないと考える。


ちらりとネットを検索したが、罪状として挙げられそうなのは、「侮辱罪」あるいは「名誉棄損罪」という事になるが、名誉棄損罪については「特例の適応」というものがあり、いわゆる「政治家の不祥事」についてはそれを「公然と事実を適示し、人の名誉を棄損」したとしても、「特例の適応」で、名誉棄損罪は成立しないとのことである。


「侮辱罪」はそのような特例がないため、「公然と人を侮辱した場合」には、その背景に事実があるなしにかかわらず成立するようである。法律家ではないので、その他、どのような「罪」に問われるのかはわからないのだが、少なくとも、「与党議員」に「政治資金の不透明性」が疑われた場合には「野党」は時に「聞くに堪えない」言葉で質問を畳みかけているように思う。そのような行為が「犯罪」だというのであれば、自党の行ないを振り返り、自制するのが「筋」だろう。


さて、そのASKUL代理店の店名を連呼しているツイートに対して、3/26付で「これ以上、このような書き込みをするものには法的措置を取ります」と小西議員はツイートしている。これについても、「法的措置をとる」という事は具体的に何を考えているのだろうか?そして、上記に挙げたツイートが続くわけである。


私が「これは変だ」と思った氏のツイートは


「通常は捜査後の起訴について被害者の見解の確認がありますが、この間警告したもの等も含め、今回は一切容赦なく全員を起訴するように検察に求めます。」


の一文である。検察庁が公開している「検察の理念」について、以下のように記載されている。


「あたかも常に有罪そのものを目的とし,より重い処分の実現自体を成果とみなすか のごとき姿勢となってはならない。我々が目指すのは,事案の真相に見合った,国民の良識にかなう,相応の処分,相応の科刑の実現である。

そのような処分,科刑を実現するためには,各々の判断が歪むことのないよう,公正な立場を堅持すべきである。権限の行使に際し,いかなる誘引や圧力にも左右されないよう,どのような時にも,厳正公平,不偏不党を旨とすべきである。」


氏の立場は「国会議員」といういわゆる「市井の人々」とは一線を画す、権力側の存在である。その立場から「~を検察に求める」というのは、「検察庁への『圧力』ではないのか、あるいはそのようにとられかねないのではないか?」と疑念を抱きかねない。立場あるものの発言としてはいかがかと思われる。検察の理念にある「権限の行使に際し,いかなる誘引や圧力にも左右されないよう,どのような時にも,厳正公平,不偏不党を旨とすべきである」という検察庁の言葉に強く期待している。


さて、侮辱罪、名誉棄損罪を調べていると、そのサイトでは「関連する犯罪」として「脅迫罪」、「強要罪」が記載されていた。


「脅迫罪」は「生命、身体、自由、名誉、財産に対して害悪を加える旨を告知する行為を『脅迫』とし、相手を脅迫した場合」の犯罪とされている。


「強要罪」は「脅迫」に加えて、「義務のないことを行なわせる」または「権利行使を妨害する」という事で成立するとのこと。


「令和電子瓦版」及びその記者は「小西議員の政治資金について疑念がある」という事に対して、取材する自由、報道する自由を有しているわけである。その自由に対して、「刑事告発を含め強力な法的措置を取ります」と牽制するのは「脅迫罪」「強要罪」に当たるのか、当たらないのか、どんなものだろうか?


多分、法の専門家の判断がどこかで流れてくると思うので、それを待つことにしようと思う。


ただ、一連のツイートを見ていて、私が感じたのは、太平洋戦争の戦前あるいは戦中に、講演会を行なうときは必ず憲兵が監視していて、大日本帝国の国体、政府の方針に反することを言おうとすると、憲兵が大声で「演説中止!演説中止!」と声をあげ、演説を止めさせていたことを思い出したこと。そして、私が「民主主義の本質」だと理解している、


「あなたの意見に私は反対だが、あなたがその意見を述べる自由を私は命懸けで守る」


という言葉である。

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