第395話 おぉ、私が見当識障害だ…。

毎週水曜日は午前中が訪問診療となっている。ただ、訪問診療は原則月に2回なので、今日のように第5週があるときには、その週は「臨時」で往診の依頼があった場合のみ動くこととなっている。


とはいえ、1週間、ほぼ自分の仕事はルーティーンになっているので、今日が「5週目」という事をすっかり忘れ、訪問診療に出かけるつもりになっていた。先週に「第4週目」の患者さんの訪問診療を行なっていたので、今朝は病棟回診をした後は「第1週目」に訪問予定の患者さんのことに思いをはせていて、「あぁ、あの人は調子よくなっただろうか」などと考えながら、朝回診終了から、午前のduty開始までの時間、書類作成などをしていた。


訪問診療の出発時刻が近づいたので、訪問診療を管轄している「在宅部」にいつもの通り顔を出した。いつもなら「訪問診療」についてくれる看護師さんが、当日回る患者さんの中で、特記すべきこと、注意して診てほしいことなどを伝えてくれるのだが、在宅部のドアを開けても、「訪問看護師」さんはおられるが、「訪問診療に付き添ってくれる看護師さん」は不在だった。


「あれぇ?何かあったかな?」と思いながら5分ほど、看護師さんが来るのを待った。「来ないなぁ、おかしいなぁ、何かあったのかなぁ」と気をもんでいると、ふと気づいた。


「あれ?今日5週目やん。訪問診療のない週だ!」と。


気が付くと同時に、在宅部の管理師長さんが戻ってこられた。「今日は5週目で訪問診療のない週でしたね。すっかり訪問診療に行く気になっていました」と師長さんに報告すると「あらあら」と笑われた。「何かあったら、連絡するのでよろしく~」とのこと。


あぁ、ぼんやりしていた。全くもって見当識障害だわ。


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