第317話 「朝から元気ですね」
職場の病棟は午前7時に明かりがつく。私の仕事開始も午前7時ころからなので、患者さんにとっては、起きてあまり時間が経っていないのだろう。高齢の方で、意思疎通のできない患者さんも多いが、朝の回診では必ず、「おはようございます。今日はいかがですか?」と声をかけてから、診察を行なっている。もちろん診察時にもいろいろと声をかけている。
意思疎通できる患者さんには、お声掛けをして、体調などを聞いてから診察をしている。比較的元気な方は「先生、朝早くからお元気ですね」と声をかけていただくことも多い(嫌味ではなく)。
私の起床時間は最近では午前5:50としている。以前は6:00だったのだが、院内でCOVID-19クラスター第1回が起きたとき、毎朝医師は全員抗原検査をする、ということになったので少し早く出勤することになり、起床時刻を少し早めた。もう今は、朝に抗原検査はしていないが、起床時間はその時に10分早くして、そのままである。
夏は、その時間にはもう朝日もしっかり昇っているので目覚めも良いのだが、どうしても冬は、「外は暗い」「外は寒い」「布団の中は暖かい」の三拍子がそろうので、なかなかスパッと起きるには気合が必要である。数分ウダウダして、えいやっ!と気合で布団から出る。
そんなわけで、ちょうど午前7時ころは、起床して1時間ほどたったころであり、それなりに頭も身体も動けるようになっているころなのである。
どうしても病院は、病気の人たちが集まる場所であり、しかも高齢の方、認知症のある方の多い病院でもある。そうするとどうしてもなんとなく「負」のエネルギーが溜まったように感じてしまう。なかなかこの状況は、ある程度しっかりした患者さんにとってはつらいように思われる。なので、少しでも明るいエネルギーを発散したい、と思って、明るく、元気に患者さんの回診をしているのである。
長寿番組「笑点」の前半で出演されることの多い、ウクレレ漫談の「ぴろき」さん。おなじみのフレーズ「あぁ~、明るく陽気にいきましょう」ではないが、せめて朝一番くらいは「明るく陽気」に患者さんに接するようにしている。もちろんその時間の回診なら、病棟スタッフは当直明けなので、「おはようございます。お疲れさまでした」と声をかけるようにしている。挨拶も大切なことだと思っている。
患者さんの「先生、朝からお元気ですね」の言葉、ありがたいと思うのと同時に、誰にも言わないが、敢えてそのようにふるまっているのでもある。
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