第306話 色々な人がいるもので…

以前、対局中にマスクから鼻を出した状態を再三注意されるも直さず、反則負けとなった将棋の日浦八段。数日前の対局でも、また同様のことを繰り返し、反則負けとなったようである。


坂本冬美さんの「夜桜お七」の歌詞で、「いつまで待っても来ぬ人と 死んだ人とは同じこと」とあるが、「鼻出しマスクをする人と (マスクを)しない人とは同じこと」である。思わず「夜桜お七」が頭の中に流れてしまったではないか(笑)。


通常外来ではなく、「ワクチン外来」で短時間にたくさんの人(1時間半ほどで60人以上)を対応すると、ポツリポツリと「鼻出しマスク」状態の人がいる。車イスで診察室に入ってくるような高齢の方であれば、「ご本人の意志」よりも、ただたまたま鼻が出ているだけ、と考えて、「マスク、きっちりつけましょうね」と声をかけ、鼻をマスクで覆うようにしている。しっかり独歩で歩いて診察室に入る人については、「鼻を出しているとマスクの効果はゼロですよ。せっかく着けているのにもったいないですよ」と伝えている。


N95マスクで一日中過ごせ、と言われると「ゲッ!」と思うほどには、N95マスク装着の苦しさはあるが、不織布マスクなら、食事の時以外は仕事中、場合によっては自宅でも食事、入浴、就寝時以外は装着していてもそれほどの息苦しさは感じない(あくまで個人的感想です)。


マスクをする、しないは今の段階では「各個人の判断」に任されていると考えてもよさそうだと思っている。5類感染症に引き下げも決定しているわけだし。ただ、医療機関内ではマスクはつけてほしいと思っている。もう死語になっているのかもしれないが「3密」、それが避けられない場合にはマスクをつけた方がいいと思う。


不織布マスクについては、残念ながら100%の予防効果はないが、コンピュータシミュレーションで明らかにエアロゾルの吸入量の低下が示されており、前向きコホート研究でも、マスク装着群が非装着群に比べて統計学的有意さをもって罹患率の低下が示されているわけである。少なくとも、合格祈願のお守りを買うよりは、不織布マスクのCOVID-19予防効果の方が「霊験あらたか」であると思っている。インフルエンザについてはなおさらである。


なので、「反マスク派」の人は、なぜ不織布マスク装着を蛇蝎のごとく嫌うのか、よくわからないところである。もちろん、「人前でマスクを外せない」と感じる子供たちが出てきていることは問題ではあると認識はしている。ただこれとて「化粧をしないと人前に出られない」と感じている人がCOVID-19流行前からおられたわけであり、それは同じような根っこを持っているのではないか、と思っているのだが。


日浦八段に対する「反則負け」の対応はマスク装着ルールの存在意義を考えると適切だと思う。ただ、日浦八段が何を考えて、「鼻出しマスク」でよい、と考えておられるのかは、将棋連盟は聞き取りした方が良いだろうとは思う。

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