第232話 朝三暮四

最近、防衛費の増額をめぐって議論が盛んである。根っこの「防衛費増額」という事についても議論はあるが、世論としては賛成多数、と新聞の世論調査で見たように記憶している。


近・現代史を見ても、もともと定められていた「国家のトップ」としての任期期間を「自分で変えてしまう」トップの人間が善政をひいたためしがない(いや、善政をひいていた、という言葉がすでに「実現不可能」なことかもしれないが)。大抵、歴史に残る「困ったこと」をしていることが多い。隣国である中華人民共和国は、毛沢東時代の反省から、「共産党一党支配」は維持しているものの「党内は集団指導制」を取って、極端な権力の暴走に一定の制限をかけ、また党の主席は任期を2期と定めていた。習国家主席がこれらを破壊し、3期目に突入したことを考えると、事態は深刻である。北海道と国境を接するロシアも、プーチン大統領は、大統領の任期は連続2期まで、という規定を、一度は傀儡の大統領を立て、自身は首相として乗り切り、次は任期の規定を外してしまったわけである。プーチン大統領が今、何をしているかは明確であろう。


北朝鮮は反米を訴えてはいるが、実際問題として仮想敵国は日本であろう。という事を考えると、周囲はどんどんきな臭くなってきており、大韓民国も、以前、哨戒機に対する火器管制レーザー照射問題が起きており、竹島問題のことも考えると、日本を取り囲む状況は非常に心もとない。それを考えるなら、ある程度の防衛力を有する必要性はあると私は考えており、防衛費の増額、防衛力の増強、という点では賛成である。


現在、その財源をどうするか、という議論があり、岸田首相は「増税」で賄うべき、と考えているようである。「国債で賄うべき」という論調もあるが、国債も山ほど抱えているし、経済が停滞、萎縮している中での増税もどんなものか、という八方をふさがれた状態である。おそらく税金を増やしていくのだろう、と思っていたら、今朝のニュース。防衛費の財源は、法人税、所得税、たばこ税から確保する、とのことだった。少し詳しくニュースを聞いていた。


所得税については、「防衛費のため、特別税として1%増税する」「現在震災復興のために付加されている特別復興税は1%減税し、その分予定されていた徴税期間を延長する」という事に落ち着いた、とのことだった。


防衛費の財源として「特別復興税を使うべき」という意見と、「目的税である特別復興税を、他の用途に回すのは筋が通らない」と議論が白熱していたのは知っていたので、落としどころを見て、「いかにも『政治』だよなぁ」と思った。現実には特別復興税の徴税期間を延長することで増税にはなるが、単年度の徴税額でみると「変わらない」という形になったわけである。


中国の故事だったか?サルにえさを与えるのに、「朝に3個、夕に4個渡す」という事に決定するとサルは怒り出し、では「朝に4個、夕に3個渡す」と変更するとサルは大いに喜んだ、という事から「朝三暮四」という言葉が出てきたように記憶している。


今回のこと、まさしく「朝三暮四」そのものだよなぁ、と思った次第である。


それと関連して、国会議員一人当たりにかけているお金、純粋な「給与」であるお金は2000万ちょっとだそうだが、その他もろもろがついて、実質は6000万~7000万相当になるとのこと。日本に国会議員が713人いる、とのことなので、国会議員に支払うお金だけで、約430億円。国会にかけているお金が年間約1100億円とのことである。徴税額、防衛費の金額から比べると大きなものではないが、国会議員の特権を取っ払って、純粋な給与以外は、業務に関してかかった費用はすべて領収書をつけて後から清算方式として、無駄を省く必要はあるだろう(普通の会社ならそうだろう?当たり前じゃないか?)と思っている。自浄能力が国会自身にないところも残念なところではあるが。



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