第218話 アドベントカレンダー

今の家に転居したころだったか、それよりもう少し前だったか?もう記憶は定かではないが、「アドベントカレンダー」なるものを妻が買ってきた。仏教徒である私の実家ではそんな習慣はなかったのだが、妻の言うところによると「クリスマスのカウントダウンのためのもので、それぞれの日付の小さな箱に、小さなお菓子を入れておく」のだとか。子供たちには「朝、ちゃんと起きれたら食べてもいいよ」と伝えて、その年の12月に入るとアドベントカレンダーを開始した。子供たちは頑張って早起きして、お菓子を食べていた。その年、クリスマスが過ぎると、買ってきたアドベントカレンダーの箱を置いておいて、翌年にも、そして毎年同じように「早起きさせる道具」として使ってきた。


そのころ子供たちは幼稚園とプレ幼稚園の年齢だったが、時のすぎるのはあっという間で、今年は長男君17歳、次男君は15歳。私は「もういいだろう」と思っていたのだが、妻が子供たちに聞くと「今年もアドベントカレンダーをやってほしい」と子供たちの意見が一致。妻は小さなチョコレートが入った大きな袋を買ってきて、その時のアドベントカレンダーにせっせとチョコレートを二つ(長男君と次男君の分)を入れて、用意をしていた。


実際に始めて見ると、やはり子供たちも成長したためか、せっかく早起きをしても、アドベントカレンダーのお菓子を食べないまま登校してしまうことがあった。「早起きして、朝のうちに食べないと『没収』となる」というルールで行なっているので、一度、長男君が食べ忘れたときは、長男君の承諾を得て、妻が忘れられたチョコレートを食べていた。


昨日は次男君が食べ忘れて登校。昨晩は雨が降っていたので、私が次男君を塾に送り迎えしたのだが、普段なら次男君が帰ってくるときにはもう私は就寝しているので、次男君を塾の帰りに迎えに行くために、気合を入れて起きていた。なので、帰宅と同時に、次男君は夕食、私は歯磨きをして床に就いた。


今朝起きると私の座る場所に次男君の置手紙が。妻に聞くと、「お母さんがお菓子を食べることが多いから、たまにはお父さんにも食べてほしい」とのこと。次男の手紙も、「僕が食べ忘れたチョコレート、父が食べてください」と書いてあった。その心遣いがうれしい。


手紙の下に、「ご配慮ありがとう。喜んでチョコレートもらいます。父」と返事を書いておいた。


その心遣いがうれしいものである。

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