第182話 師子身中の虫

世界三大宗教であるイスラム教、キリスト教、仏教、いずれも教え(のすべてとは言わないが)に普遍性があるので、いわゆる「皆殺し」のような虐殺がなければ(いや、あったとしても)外側から宗教が崩れることはほとんどない。現実問題として、江戸時代の禁教であったキリスト教、バレれば皆殺しであったにもかかわらず、鎖国下の日本で200年以上、信仰は保たれてきたわけである。外的要因では純粋な信仰を破壊することはできない。信仰が崩れるとき、それは内部からの腐敗が原因となる。カトリックからプロテスタントが分派したのも、免罪符の発行など、聖職者の堕落、腐敗が原因である。キリスト教においては、プロテスタント、カトリックにかかわらず、現在聖職者の堕落をどうするか、という問題に直面している。


仏教においても同様である。強い弾圧を受けていても、チベットの人たちの仏教への信仰が消えることはない。その一方で、お釈迦様の時代から、反逆者提婆達多は自身の承認欲求を抑えられず、その姿を釈尊に厳しく責め立てられ、釈尊の教団よりも厳しい戒律を打ち立てた自宗を立ち上げ、500人の仏弟子を引き連れて出て行った(舎利弗、目連の二人の仏弟子に諭され、いったん釈尊のもとを離れた仏弟子500人は釈尊のもとに戻っていった)。提婆達多は仏弟子であったころ、八万宝蔵と呼ばれる経典のうち六万を諳んじ、自在な神通力を使うことのできた高い位の弟子であった(しかも釈尊のいとこでもある)。そのような立場のものでも、我欲を制御できず、釈尊に反逆し、地獄に落ちる、という事になった(少し脱線するが、過去世に釈尊が仏道修行をしていた時、提婆達多はその師匠である「阿私仙人」として法を教え、現世では「反逆者」の姿として「仏の教え」の正しさを証明した。自身の罪の報いを地獄で受け終えた後は仏となる、と釈尊より成仏の記別(仏の名、仏国土の名前、仏の寿命)を与えられている)。その後の仏教の歴史を見ても、仏の教えは、外部からではなく、内部腐敗から失われていく。釈尊自身が「師子身中の虫」と言われたとおりである。


さて、最近宗教2世の問題が注目を浴びている。旧統一教会では、高額献金の実態を記者会見で明らかにしようとした2世に対して、その両親が「その子は狂っている」などといちゃもんをつけて、会見を中止させようとしたことがあった(それだけで、どちらが正しいことを言っているのか、明らかだと思う)。「幸福の科学」の大川 隆法氏の長男が教団の暴露本を出しているし、創価学会でも、「最高幹部の一人」と言われている人の息子さん(正木 伸城氏)が暴露本を出しているし、いわゆる創価学会のエリートコースを経てきた、一世を風靡した芸人さん(長井 秀和氏)が、インタビューを受けたりしている。


こうやって、内部崩壊をしていくのかなぁ、と眺めている。


ここからは余談になる。昨日のネットニュース、ソースはデイリー新潮。先ほど挙げた「一世を風靡した芸人さん」である長井 秀和氏が、インタビューにこう答えていた。


「学会側が明言することはありませんが、財務(注・一般的には寄付、お布施のこと)の額はおおむね収入の1割が目安といわれています。10日で1割の高利貸し“十一(トイチ)”にちなんで、私は学会の財務を“宗教十一”と呼んでいますが、収入が低ければ低いほど、当然、負担は大きくなる。うちの両親でもすでに総額で数千万円の寄付をしていると思いますよ。それだけでなく、例えば高額な学会専用の仏壇を3基も購入していて、仏壇関連だけで約2千万円。統一教会の“100万円の壺”なんて安すぎて、多くの学会員はピンとこないんじゃないでしょうか」

と。


「統一教会の”100万円の壺“なんて安すぎて、多くの学会員はピンとこないんじゃないでしょうか」とのことだが、彼の言っている、「財務」は収入の一割、が本当のこととして、100万円の壺が安すぎる、という事は少なくとも年収が1000万円以上はある(安すぎる、というぐらいだから、3000万とかそれくらいの年収か?)という事に彼の論理ではなるはずである。かつては、あるいは今も「創価学会は貧乏人と病人の集まり」と揶揄されることがある。特に教勢が拡大した昭和30~40年代にはよく言われていたそうだ。そういわれていた人たちが、純粋に信仰と仕事に励んで、たくさんの人が年収3000万になっている、としたら、それはすごいご利益じゃないのかなぁ?と思ってしまう。


仏壇についても、長井氏のご実家では仏壇3つで2000万円以上お金を掛けている、という事なのだが、仏壇3つもいるのかなぁ?というのも疑問である。別に創価学会が仏壇を売っているわけではない。仏壇屋さんが仏壇を売っているのだが、ネットで見てみると、創価学会の仏壇を専門に扱っている、という仏壇屋さんは「金剛堂」というところと「仏宝堂」が検索された。それぞれのサイトを確認したが、高い仏壇から安い仏壇まで幅広く扱っている。高い仏壇はやはり大きく、それなりの広さの部屋に置かなければ不自然である。一番高いのは金剛堂で300万円ちょっと、仏宝堂で440万円だった。ちなみに金剛堂で一番安い仏壇は3900円(3900万円じゃないよ!)、これがそれなりに売れているようである。仏宝堂の仏壇も、やはり5000円しない仏壇も扱っている。これらがそれなりに売れているわけなので、みんながみんな仏壇に何百万も払っているわけではないのは明らかである。長井氏、芸人さんであることを考慮しても、話を盛りすぎのような気がする。


大きな組織になると、ドロドロしたところが出てくるのはしょうがない、と思うのだが、ネットでも大きく取り上げられていた上記の発言、個人的には「話の盛りすぎ」で辻褄が合わないような気がするのだが。


また氏の発言の中の「宗教十一」のこと、よくよく考えれば、国の消費税が10%なので、僕らの手取りの給料から、お金を使うたびに「消費税十一」で金をとられているわけである。事実かどうかよくわからない「宗教十一」を批判するなら、現実に取られている「消費税十一」についても、使い道などをしっかり注視していかなければならないのではないか、とも思う。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る