第181話 「指折り数えて」って、え~っ!

次男君は受験生。いろいろ親としても考えることが多い。昨日は、妻と私、次男君で、入試も近くなったこの時期の生活習慣について話し合いをした。次男君の成績は、傍で見る限り第一志望校には微妙な感じ。父としては、何もかも振り捨てて、やっきになって勉強をしてほしいのだが、本人は、PCゲームのMinecraftもやりたい様子。そんなわけで、一日をどのように過ごすのか、考えていた。


睡眠時間は、受験生にとって重要なものである。以前は「四当五落」(睡眠時間4時間なら合格、5時間なら不合格、という意)なんて言葉もあったが、今では、ある程度しっかり睡眠をとらなければ能率が下がることが分かっている。「正しい睡眠時間」なんて定義できるわけではないが、多くの人が「8時間」を睡眠の目安と考えて、それよりも少ない睡眠時間で十分な人を「ショート・スリーパー(short sleeper)」、8時間以上の睡眠時間を要求する人を「ロング・スリーパー(long sleeper)」と定義すると、ショートスリーパー:普通の人:ロング・スリーパーの人口比は1:8:1くらいになるといわれている。かのナポレオンは1日3時間の睡眠で十分だったようだが、彼はショート・スリーパーだったのだろう。私の恩師も、当直についての昔話を聞いていると「3時間ほどぐっすり寝たら、あとは何回呼ばれても大丈夫。日中も問題なく仕事をしていたよ」とおっしゃられていたので、恩師もショート・スリーパーだったのだろう。ちなみに私はノーマル、次男君はロング・スリーパーの印象である。


「じゃぁ、あんた、11時に寝るとしたら…」と私が、指を折って時間を数え始めると妻が、最初は怒った声で、そのうち爆笑しながら、「お父さん、なんで指を折って数えているのよ!指を折らなくても、すぐに計算できるじゃない(怒)! もう…(だんだん笑いに)、名門大学の理系を卒業して、修士号まで取って、医学部にも進学して、立派に医者の仕事をしているのに、指を折って数えているなんて、あなた、幼稚園児か保育園児なの(爆笑)?」とのこと。


あぁ、わかっているよ。睡眠時間は「起床時刻-就寝時刻+1」で計算できることを。だけど、その回路が働くより前に、指を折って数える回路が動き出したんだよ。


振り返ると、外来でもよく指を折って数えている。高齢の患者さんが多いので、目の前で指を折って数える方が納得してもらいやすい。だから指を折って数えるようになったんだ、と、とりあえず言い訳しておく。子供たちも大きくなったので、注意することもないが、指を折って計算している子供に「頭の中で計算してごらん」なんて偉そうなことは言えないなぁ、と少し恥ずかしくなった次第である。

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