第72話 ほら、やっぱり!
連日、20万人前後の新規感染者が報告されているCOVID-19。当院の貧弱な発熱外来でも、ほぼ連日100%の陽性率である。子供たちの感染も多く、「濃厚接触者」としうこととなり、長期に休まざるを得ないスタッフが増えている。病棟スタッフは、看護師さんも介護士さんも本当にギリギリの人数で回さざるを得ず、大変そうである(もちろん医師は普段から大変なのだが)。
そんな中で、再度恐れていたことが起きた。COVID-19は発症の2日ほど前からウイルスを排出するようになるが、無症状なので(文献では10%程度は無症状、別の文献では無症候性感染の頻度はもっと高い、と言われている)どうすることもできず、仕事についていた、という事態になってしまう。患者さんと直接接する時間が最も長いのはリハビリのスタッフ(看護師さんも関わる時間は多いが、短時間の接触を繰り返す、というパターンであり、規定の時間を患者さんとともに過ごすリハビリスタッフが最も入院患者さんと濃厚に接触していることになる。リハビリスタッフは全員、勤務中は不織布マスク+フェイスシールドを装着し、こまめに手指消毒を行い、感染予防に努めていたが、1名、感染経路不明のCOVID-19になってしまった。
入院患者さんの中には、認知症がひどくて、マスクを着け続けることができない人、酸素投与中で、マスクをつけられない人など、患者さん側がノーマスクのことがしばしばある。なので、そのスタッフが前日リハビリを担当した患者さんは全員「濃厚接触者」として扱うことになった。3日間の経過観察で症状が出ず、その後に核酸増幅検査(PCRもその一つ)を行ない、隔離部屋の全員が陰性であれば、その部屋の人は隔離介助、ということで進んできたのだが、女性部屋の4名は核酸検査で全員陰性だったため、隔離終了となった。残念なことに男性部屋の一人(しかも私の担当患者さん)が、COVID-19陽性となってしまった。その患者さんはこの数週間、院内の人以外とは接触がなく、おそらくリハビリの時に感染してしまったのでは、と推測されている(検査キットが供給不足で少ないので、病棟の患者さん全員に検査をすることができない)。そんなわけで、とうとう病棟で患者さんの発症例が出てしまった。男性部屋の人で残りの二人は、同室者の「濃厚接触者」となるため、解放された女性部屋に移動となり、また週明けの検査、となることとなった。おそらく、スタッフを含め全員調べると、ある程度の陽性者が出るのではないか、と懸念している。恐れていた院内クラスターである。
とはいえ、ここまで気を付けていても発生しているわけで、クラスター発生を予防することは不可能なのではないか、と思っている。
新しい患者さんが入院するときに、ご家族(時に患者さんとご一緒に)にいろいろとお話をするのだが、必ずする話として、「世間でCOVID-19 第7波が来ていますが、医療スタッフがいくら努力しても、クラスターが起きるときには起きます。なので、クラスター発生についてはありうること、と考え、ご理解いただければ、と伝えている。
たぶん、本気で調べたら、病棟内クラスターになっているんだろうなぁ、と思いながら、外来でも、そして病棟でもN95マスクをつけ、花粉症対策用の眼鏡(ゴーグル代わり)をかけ、フェイスシールドをつけて仕事をするようにした。
週末、週明け、どのような事態になっているのか、心配である。ちなみに、今回発症した方、かなりのご年配であるが、今のところお元気そうなので、何とか10日間、乗り切れるかなぁ、と甘い期待を持っていたりする。
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