第53話 COVID-19の余波

この2週間ほど、すべてを破壊するかのようにCOVID-19感染者数が増えている。医療機関へのアクセスも難しくなってきて、という報道を聞くと、おそらく発表、報道されている感染者数以上に、実際の新規感染者はいるのだろう。いつぞやの論文で、COVID-19感染者の約10%が無症候性(症状がない)という事を読んだことがある。無症候性感染を考えると、キリがない。感染防御も不可能である。というわけで、社会全体が機能不全に陥っているが、とうとうその波が当院にもやってきた。


当直医を派遣していただいている大学医局でクラスターが発生し、今日当直予定のDr.も陽性になったそうだ。事務長に連絡が来たのは14時過ぎだったのだろう。病棟でカルテを書いていると事務長が沈んだ声で、「先生、ご相談したいことがあるので医局にお願いします」と私に連絡してきた。


「何事だろう?俺、何かひどい医療ミスをしたのかなぁ??」などと心配になりながら医局へ戻る。事務長が医局にやってきて、「先生、実は今日の当直予定の先生がCOVID-19陽性になったと連絡があったんです。突然のことで当直医が手配できず、大変申し訳ないんですが、先生にお願いできたらと…」と。


振り返ると、医師免許を取ってから15年くらいは、週に2回程度の当直をしていた。初期、後期研修医の時の病院では当直は基本「眠れない」ものだった。ご自身で受診する患者さん、救急車で搬送される患者さん、本当に深夜まで途切れることがなかった。時には深夜にも途切れることなく、ER当直全員が朝まで一睡もできず、という事も珍しくなかった。診療所に転職してからは、そこまで激務ではなくなったものの、今度は自分一人が当直医であり、時に冷や汗をかくようなことがあったりと、それはそれで大変だった。やはり「当直」をしていると、寝ているようでも寝ていない。電話があればすぐ飛び起きて、即座に頭をフル回転させなければならない。なので、当直明けの朝は、何事もなく寝たはずなのに、「眠れていない感」で一杯だった。もちろん当直明けにも通常業務が入っている。


数年前に病気で数か月職場を離れ、それ以降、当直をすることはなくなった。今の職場に移っても、当直はなし、という事になっていた。


なので、数年ぶりの当直である。まだ担当時間に入ってすぐだが、今夜どうなることだか、心配である。どうか病棟も、外来も平和でありますように。


ちなみに、もちろん明日は通常業務である(笑)。明日の夕方まで頑張ろう!

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