エイルの挑戦状(企画参加)

熊パンダ

エイルの挑戦状

異世界に転移したが魔王が強すぎる。


 何度も勇者熊パンダのチートスキルである死に戻りを駆使して、魔王との戦いをやり直しているが勝てる気がしない。


 死に戻りとは、死ぬと少し前に戻りやり直せる能力だ。もっとも戻れるのは魔王と戦う直前に固定されている。


 だいたい大陸が吹き飛ぶ威力の隕石を当てても、完全物理無効によりノーダメージだし、異世界転移させるにも完全魔法無効で効果なし、もちろん攻撃魔法もノーダメージだ。


 完全状態異常無効で、デバフも毒も石化も変化も何もかも、そう封印さえも完全無効だ。オマケに超回復で細胞が一つでもあれば数秒で元に戻るらしい。そもそもかすり傷すら与えられないけど。


 対話しようにも見た目は、毒々しいでっかい恐竜で、食うか、殺るか、どちらしかないという知能もない生き物だ。


 しかし放置していては、世界中の生き物が食い尽くされてしまう。


 そこで勇者熊パンダのアイディアの出番だ。


          ***


「……と言うわけだ」

「……まじで?」

 俺は言葉を疑った。

 それもそうだろう。

 自分に似た顔のやつが"一万人ほど"急に俺の前に現れたと思ったら、「俺は死に戻りをしている」……なんて言うんだよ。

 普通なら信じないだろうがな……流石に一万人もの同じ顔があったら信じるしかないだろう。


 全員魔王に負けてこの魔王と戦う前に戻ってきたらしく、どうやら負けるたびにその人格が受け継がれていく……のではなく、過去に"肉体ごと"戻ってくるらしい。


「じゃあどうやったら勝てるんだ? 聞いた話だと化け物以上じゃねえか……倒す手が見つからないぞ」

 物理も魔法も状態異常まで聴かないとは……神は俺のことが嫌いなのだろう。


「……手なら、ある」

 すると突然一万人の俺の中から一人が手を上げた。

「お前は……1号!」

「やっと喋る気になったんだな!」

 ややこしいから番号で呼んでいるのか……違いがわからん。


「何度も何度も戦って……そして良い加減気づいた……ズバリ、俺たちは脳筋だった、と言うことだ」

「……というと?」

「転移魔法で"異世界に飛ばすのが無理"だったのは覚えているか?」

 転移魔法……俺はこの世界で最も転移魔法に優れている冒険者だ。


 一番得意な魔法なために恐らく最初に試したのがそれだと思う。


「"異世界に飛ばす"のではなく、"異世界から召喚する"のだ」

「「「「「「……ん????」」」」」」」


 俺を含め、全員の頭が追いつかない。

 ……単純に俺達はおつむが弱いのだ。


「まずはな……」

 作戦が決まった。


         ***



「よし……いつもの場所にいるな」

 一号は恐竜の形をした魔王を見た。

 大人しく挑戦者を待っている。


「これより作戦名"完全なる消滅"を実行する! 総員準備はいいか!!(小声)」

「おう!!!!(小声)」

 すると五百人ほどの俺が前に出て範囲転移魔法を唱える。


 すると"周囲の"景色がガラリと変わった。

 そうここは"アビス"と呼ばれるラストダンジョンの地下深く。


 転移魔法で周囲を移動させたのだ。

 おっと、無効されるのではないかと思うだろうが、俺たちは"魔王"に向かって転移魔法をしたわけじゃなくて"大陸ごと"移動したのだ。


 "アビス"はどこまで広がっているかわからないほど巨大な穴だ。

 

 ……というのも、この"アビス"を発見したのは8000号の俺だ。

 魔王によって地面に叩きつけられ、たまたまこの"アビス"の空洞までやってこれたのだ。

 それも魔王の力と俺の頑丈さ故のことだろう。


 ただ馬鹿な俺はそこが何処か、全く興味を示さず調査もしなかった。

 結局そこが無尽蔵に広がる謎の空洞だと気づいたのは9560号の俺だが。


 この惑星の岩盤近くの広がる世界、"アビス"では特別な生物が生息している。

 バリア食べ虫。

 9825号の俺がそう名付けた。


 どんなバリアでも食べてしまうらしい。

 たとえそれが物理無効でも、魔法無効でも、状態異常無効でも、だ。

 では何故この策を使わなかったのか。


 ……いや、実はこの策、もう五十回ほど行なっている。

 ただそれもバリアを消して全員で畳みかけるというもの。


 五十回やって気づいたことらしいが、なんとこの魔王そもそもの能力が化け物並みに高い。

 叩いても何しても効かない。

 それに尻尾で薙ぎ払われたら一斉にやられてしまう。


「今回違うのはここからだ!」

 一万人の俺が一斉にとある魔法をかけた。

 またも転移魔法。


 少し違うのは魔王上空の空間に向かってだ。


 そこからは謎のとても巨大な穴が出現し、そこから何かがドロドロと流れてくる。


「"タイムストップ"!」

 一万人の魔力を集結させ、普通なら人間ができないであろう高度な時を数分止める魔法を使う。


 そしてドロドロとした何かは恐竜の形をした魔王を一気に飲み込んでいく。


「"ブラックボックス"!!」

 信じられない量の魔力が吸われていく。

 またしても数人がかりじゃないとできない高度な魔法。

 超高密度の金属で固められた巨大な箱が現れ、恐竜とドロドロのものを飲み込む。

 そして残りの体力のドロドロもみるみるうちにその箱は飲み込んでいく。


「……!!!」

 時間止めの効果が切れたが、魔王の暴れている様子が見えない。

 殆どがドロドロしたものによって覆われているからな。


「ふぅ……」

 全てのドロドロを飲み干したブラックボックスはそのまま音もなく消滅していく。


「勝ったッ! 第3部完!」

 それ、死亡フラグと言いたいが、今回は完全に勝ったはずだ。


 時間を止め、セメントの海に沈める。

 そしてそこだけの時間を加速させセメントをすぐ固定させた。

 まぁこれは念のためのものだが。


 本命は"ブラックボックス"。

 完全消滅魔法だ。


 入ったものは必ず消滅される。

 ブラックホールのようなものだが、これには欠点がある。

 魔法無効化は効かない、魔力量が大きすぎる事だ。


 だが今回は無効化もなければ魔力量で困ることもない。


 つまり完全なる勝利という事だ。


「「「「「「うわっはっはっはぁ!!!!」」」」」」



「……あのさ、俺たちって勝っても元に戻るのかな?」

「「「「「「あっ……」」」」」」


          ***


 一つの国が最近話題だ。

 なんと一万人の国民全員が同じ顔をしていて、全員男。

 全員が相当の魔法の使い手だ。


 ただ……みんなおつむが弱い。

 国を作り一週間でその国は滅びた。

 国民は納得がいかない様子で責任の擦りつけを行ったそうな。


 そうして喧嘩した国民達は世界各国に散らばっていった。


 その後、世界で戦争が勃発。

 切り札として使われたのはその国民だったという。

 ただ頭が弱いらしく、結局は国を自滅に追いやった。


 こうして、魔王が倒されて約一ヶ月で世界は滅びる事となった。


 おしまい



          ***


 好き勝手にやりました。

 後悔はしていないです!

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エイルの挑戦状(企画参加) 熊パンダ @kumapand

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