煉獄の道標
煉獄の道標
作者 戦ノ白夜
https://kakuyomu.jp/works/16817139557557268064
導きの森にまといこんだ人間に、人生の道案内をする煉獄の使徒の話。
ホラーかしらん。
現代の御伽噺のような怪奇もの。
本作の冒頭と終わりは、「導きの森」の番人である煉獄の使徒、一人称私で書かれた文体。自分語りで実況中継をしている。本編は三人称で導きの森に迷った男視点と煉獄の使徒視点、神視点で書かれた文体。
女性神話の中心軌道に沿って書かれている。
神様から仰せつかり、導きの森とよばれる森で、まだ『手遅れでない』迷子の魂が正しき道に戻るための手伝いをしている煉獄の使徒は、包み隠さず話さぬ者は、浄化の炎に焼かれて美味しくいただいている。
パワハラ上司にひどい目にあいつつ同じことを部下にした挙げ句、他人の車と財布を盗んで逃走している男は、導きの森に迷い込んできた。
煉獄の使徒は男の前にあらわれ、「人生の道案内」をして差し上げましょうと声をかける。悩みを聞かせてくれれば未来は明るくなると伝えて、浄化の炎をみせる。
男が語ったのは、すべてではなかった。都合の悪いことが炎に浮かび、炎に牙をむかれ焼き殺されてしまう。
男の魂を食べた煉獄の使徒は、次の仕事に向かうのだった。
男が盗んだ車と財布は、部下のものだったのかしらん。
パワハラ上司にされたことを部下にしたとあるけれども、嫌がらせをしたり罵ったりしたのかもしれない。
煉獄とは、浄罪界ともいい、 カトリックでは天国と地獄との間にある所。死者の霊が天国に入る前にここで火によって浄化される所。 また、苦しみを受ける場所のたとえ。
キリスト教において神により罪をゆるされ義とされるも、罪の償いをまだ終っていない死者の霊魂が至福の状態に導かれるまで、残された償いを果すためにおかれると信じられる苦しみの状態を指す。
なので、男が焼かれるのは、残された罪の償いをするべく浄化されたとみることもできる。焼かれ、煉獄の使徒に食われたことで天国か地獄、いずれかへと旅立ったのかしらん。
煉獄の使徒の、「寄り添ってくださった方を差し置いて、違う方へ手を出したのはどういうことです?」が引っかかる。
「寄り添ってくださった方」とは、、自分にとって都合の悪いことを意味していると考える。
寄りそう、つまり男がひどいことをして、そんなことをしないでくださいとすり寄って懇願してきた相手の意味かしらん。
人は、他人にしたことは忘れるのに、他人からされたことはいつまでも覚えているという。
そのことを指しているのだろう。
もし、自分がしたこともされたことも包み隠さず話す人が現れたなら、どんな道案内をしてくれるのだろう。
「神様から仰せつかった仕事をこなしているだけの、人畜無害な異形ですからどうぞご安心を」とあるけれど、はたして本当かしらん。
人間というのは、いい人間と悪い人間がいるのではない。
いいことをしながら悪いことをし、悪いことをしながらいいことをしてしまうもの。誰かにとっては悪人でも、誰かにとっては善人なのだ。
炎に燃やされ魂を食べて殺されたら、困る人もいるかもしれない。
人に関わる以上、人畜無害とはいえないだろう。
人畜無害であろうと心がけている異形なのだ。
それに、どんな神様から仰せつかったのかしらん。
いい神様も悪い神様もいろいろいるし、采配は神様の都合だから。
教訓としては、道に迷ったときは良いも悪いもひっくるめて素直に吐き出し、あるがままの今を受け止めることかもしれない。
そしたら、きっと光がみえてくるのだろう。
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