第四話① 只今より、我々は一家揃ってピクニックを強行するッ!


 今日は家族三人でお出かけよっ! お姉ちゃんの作ったお弁当を持って、ピクニックに行くのっ! 外でテントを張ったり、お弁当を食べたり、フリスビーで遊んだりする予定よっ! 家族サービスってやつねっ!


「よし、これでお弁当はオッケーかな? パパ、テントの用意はできたかい?」

「もちろんだ我が娘よ。パパのマッスルにかかればテントの一つや二つ、どうってことないんだぞ?」

「テントに何する気なのさ。あと僕は息子だよ。ジェニー、お出かけの用意はできたかい?」

「もちろんよっ!」


 台所でTシャツとジーンズの上にエプロンをしたお姉ちゃんがお弁当をバスケットに詰め終わってたわっ! バスケットの中にはサンドイッチがいっぱいっ! わたしの大好きなフルーツサンドも、たくさん作ってくれてたわっ!

 隣にあるマヨネーズサンドが異彩を放ってるけど、多分気のせいねっ! パンにマヨネーズが挟んであるんじゃなくて、マヨネーズでパンを挟んでるのっ! わたしのフルーツサンドにもついちゃってるわっ! あははっ!(ヤケクソ)


 そしてリビングでは、パパが家にあったテントの確認をしていたわっ! 部品があるか見て、一部を組み立てて確認してたみたいっ! 裸でっ! マッスルボーズも挟んでっ! いつものことねっ! あははっ!(白目)


「ボトルにハンケチ、お洋服に靴、スマホにデジカメもバッチリよッ!」


 諸々を諦めて。いつもの紺のチュールワンピースを着て、ペンダントを首から下げて、自分の用意したものを小さい肩掛け鞄に詰め込んだら準備万端っ! 手も足もお腹も背中も首も頭も、各身体のパーツにも異常なしっ! いつでもお出かけできる体勢に入ったわっ!

 スマホもデジカメの充電もバッチのグーよっ! これでお姉ちゃんのお出かけ姿を、しっかりちゃっかり撮影しちゃうんだからっ! 仕入れは大事よねっ!


「ジェニー。スマホはともかくデジカメは置いていこうか」


 と思ったらお姉ちゃんにデジカメを取り上げられちゃったわっ! しまった、ぬかったっ! こうなったら家族の情に訴える作戦でいくしかないわねっ! いつの時代だって、人情は大事なのよっ!

 ここは勝負に行くわっ! 昨日学校でやったテニヌに習って、ワンセットマッチ、ジェニファー、トゥサーブ、プレイっ!


「どうしてお姉ちゃんっ!? 家族団欒を永遠に残る記録として保存しておかないのっ!?」

「君の言う家族団欒は僕しか写ってない写真のことを言うのかい?」


 どうしましょう、鋭い返しが来ちゃったわっ! お姉ちゃんのリターンエースでフィフティーンラブよっ!


「そ、そんなことないわっ! ちゃんと家族で過ごすお休みの日の画像を」

「ねえジェニー。今デジカメを見たら僕の寝顔が入ってたんだけど、これは何かな?」


 わたしの渾身のサーブが、またリターンエースされちゃったわっ! サーティラブっ! もう二点差になっちゃったっ!


「そ、それは、その。お姉ちゃんの成長記録を……」

「まさかとは思うけど、この前退会させた筈のあのサイトに別垢作ってないよね? スマホも出して」


 フォーティラブっ! どうしましょうっ!? あと一点で一ゲーム取られちゃうわっ!


「全く。ジェニーっては全然懲りてないんだから。えーっと、退会とデータ削除処理は……」

「返してぇぇぇっ! お姉ちゃん返してわたしのスマホとデジカメぇぇぇっ!!!」


 ゲームウォンバイ、お姉ちゃんっ! ゲームカウント、ワンゲームトゥラブっ! わたしのJC三世がぁぁぁっ!!!


「さあ、テントもたたみ終わったし出かけようか我が娘達よッ! ピクニックの始まりだッ!」

「よし、全部消せたね。デジカメは没収。あとはゴンちゃんに連絡して、出回ってるやつも順番に消してもらうようにしなくちゃ。はいジェニー、君のスマホ」

「ぐすん」


 やっと返してもらったけど、JC三世ももう廃業なのね。でも諦めないわっ! 顧客が尽きない限りJCは滅びぬっ! 何度でも蘇るわっ!


「それと指定アプリ以外の通信に制限をかけるアプリも入れておいたからね。しばらくの間、反省するように」


 JCは死んだんだ。もう帰ってこないのよ。わたし達はいい加減、現実に目を向けなきゃいけなんだわ。これじゃ再開の目途が立たないっ! アメリカンガッデムっ!


「さあっ! みんなでピクニックに行きましょうっ!」

「「おーッ!!!」」


 何はともあれ、今日はピクニックよっ! これはこれとして楽しまなきゃ損だわっ! ダンシング阿呆にルック阿呆、同じ阿呆ならレッツダンシングってジャパニーズも言ってたわっ! 多分違うわねっ!

 そうして意気揚々と荷物を抱えて、わたし達は家の扉を開けたのっ! 外は雨が降ってたわっ! ザーザーの土砂降りよっ!


「「「…………」」」


 みんなで一斉に固まっちゃったっ! 荷物を持ったまま、玄関先から動けないでいるのっ! 空から落ちてきた雫が目の前で地面にたくさん落ちていくわっ! 静かな場に落ちゆく雨の雫。ジャパニーズ侘び寂びってやつかしら? まとめてワサビねっ!

 わたしは玄関先にあった三人分の傘を引っ掴むと、それをパパとお姉ちゃんに渡したわっ!


「……さあっ! みんなでピクニックに行きましょうっ!」

「「おーッ!!!」」


 でもわたし達は諦めないのっ! 雨の中、三人で傘をさして飛び出したわっ! だってあんなに用意したんだもん、行かなきゃ時間的損失が発生しちゃうわっ! テイクツーとばかりに声を上げたら、二人も乗ってくれたし。やっぱり行かなきゃ駄目よねっ!


「よぉしッ! パパここでテント立てちゃうぞーッ!」

「じゃあジェニー。僕とフリスビーしようか」

「うんっ!」


 そうして目的の森林公園までたどり着いたわっ! パパが全裸で雨の中テントを組み立てている間に、わたしとお姉ちゃんは雨の中でフリスビーをするのっ! 傘は邪魔だから持ってないわっ!


「いっくよー、お姉ちゃんっ! えいっ!」

「うわわわッ! 全くジェニー、どこに投げてるんだい?」

「えへへへー、ごめんなさーい」

「よぉし、できたーッ! テントの完成だッ!」

「じゃあジェニー、お昼ご飯にしようか」

「うんっ!」


 そうしてわたし達はみんなでびしょびしょになりながらフリスビーした後に、びしょびしょのままでテントの中に入ってお昼ご飯にしたわッ! お姉ちゃんのマヨネーズ付きのフルーツサンドは、がっつりマヨネーズの味がしたわっ! せっかくの生クリームと各種フルーツが台無しだったわよっ! ヴォぇぇぇ……(清楚)。

 ご飯の後はみんなでお話して、そして家族三人でフリスビーもしたわっ! パパが投げると剛速球になるから、わたしも掴むの大変だったわっ!


「また、腕をあげたな……パパ」

「なあに、まだまだよ……娘よ」

「なんで師匠と弟子みたいなやり取りしてるんだい? 逆じゃない、立場?」


 なんだかんだでピクニックを楽しんだわっ! たまには家族水入らずでのお出かけも大事よねっ! 水は有り余るくらい、容赦なく降ってきてたけどっ!


「「「ハークションッ!!!」」」


 次の日は、家族三人でくしゃみして頭痛が痛かったわっ! あまりにしんどくて病院に行ったのっ! 診断結果は風邪よっ! 心当たりはありますかってお医者さんに聞かれたから、雨の中でピクニックしました、って言ったらそりゃそうだよって返されちゃったっ! これもリターンエースねっ!

 雨の日にピクニックに行ったら風邪をひくわよっ! みんなも気を付けてねっ! HAHAHAHAHAHAークションっ!!!

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