バッドエンドがお好みの方はこちら
あたしは見ないフリをした。
ジーニャ先輩が暴れる患者に傷つけられて、医者として詰んでいる事にも。
精神を病んでいる事にも。
マリアンヌ様を見る厳しい目つきも。
睡眠薬を盗み出した事も。
見えていて、知らんプリ。
あたしは何もしていないにゃよ。
休憩時間に薬を持ってどこかに行き、青ざめた顔をしてクリニックに戻ってきた先輩にも、普通に接するにゃよ。
何をしてきたのか想像はつく。ちょうど良かったにゃ。彼女の容色は衰えてしまったのだから、もういいにゃ。
あたしはレッドさえいれば。
フフ、先輩、お疲れにゃね。紅茶を淹れてあげるにゃ。甘い甘いお砂糖も入れて。
マリアンヌ様転落の混乱に乗じて、長く投獄されていた画家を自由にして、血で真っ赤に染まった彼女を描いてもらったにゃ。
うんうん、いい出来にゃね〜さすが赤い服マニア。これはあたしの診察室に飾るのにゃ。
主任のジーニャ先輩が服毒自殺を図ったから、次の主任はあたしにゃからね!
魔王城クリニックの主任。魔王子レッドの許嫁。
あたしの未来は輝いているのにゃ!
+++
ああ、レッドは変わってしまったのにゃ。
どこの馬の骨か分からない孤児に入れ込んで、名前を与えて可愛がっているのにゃ。
マリアンヌ様のように白い服を着させて、マリアンヌ様の部屋を与えて。
自分だけのママを新たに作る気にゃね。
あたしという者がありながら!
レッドの為なら何でも出来る。
名探偵になりたいレッドのためなら犯人役だって上手く演じて見せるにゃよ。恋する猫は女優なのにゃ。
ズタズタに傷つけてから、このお薬を使ってレッドを赤ちゃんにして、教育し直すのにゃ。
あたしだけを愛して、あたしだけの為に生きていくのにゃよ。イイ子、イイ子……。
あれ、目の前が真っ暗になったにゃ。
おかしいにゃ。
何も見えない。体が動かない。
おーーい、ここはどこにゃーー? だれかーー?
あたしは、レッドの許嫁にゃ。
マリアンヌ様も認めてくれて、一緒に肖像画に描いて貰えるはずだったにゃよ?
あの日貰った花冠、ドライフラワーにしてとってあるにゃよ。あたしの大切な宝物。
ホラ、結婚式場が見えるにゃ。
大人になったレッドがタキシードを着て、あたしに向かって手を差し伸べているのにゃ。
はあ、いい男になったにゃねえ。
しあわせにゃ〜。
「医者猫ミーニャはナゾトキをしたい!」
〜完〜
読んでくださり、ありがとうございました。
医者猫ミーニャはナゾトキしたい! 秋雨千尋 @akisamechihiro
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます