第2話 タイムリミット
「美月~、美月~!」
玄関から私を呼ぶ声が聞こえてきた。幼なじみの沙綾だ。相変わらず声が大きい。
「ごめーん、あとちょっと待って!ほんとにちょっとだけだから!」
私も負けじと大きな声を出す。私と沙綾は、小学生の頃から毎日一緒に登校している。今年でもう12年目だ。沙綾はいつも7時半ぴったりに私の家に到着する。私の準備は7時半には終わらないから、いつも沙綾を待たせてしまっている。
「待たせて本当にごめん!!」
階段を駆け下りながら私は言った。
「いつものことだから気にしないで笑」
と言って、沙綾は笑った。このやりとりを玄関でした後、学校に向かうのは、もはやテンプレートだ。この会話から、とても愛しい時間が始まる。
「そういえば、第一志望の大学どこにした~?」
舞い降りてきた桜を指でキャッチしながら、沙綾は私に問いかけた。毎日一緒に登校しているが、進路の話をするのは今日が初めてだ。驚いた。
「XX短大かな~。保育の勉強ができるし、実家から通えるし。」
「そっか~。昔から保育士になりたいって言ってたもんね~。」
「沙綾は?」
私はすぐに問いかけた。
「私は、YY大学の経済学部に行こうと思ってる。」
沙綾が答えた。YY大学は、東京にある有名大学だ。勉強が苦手な私でも知っているんだから、さぞかしレベルが高い大学であるに違いない。
「YY大学か~。めっちゃ有名な大学だけど、沙綾は頭がいいからきっと受かるよ!」
心の底からそう思った。
「ありがとう笑
でも、もし私がYY大学に入学できたら、美月と離ればなれになっちゃうよ~」
少し悲しそうな顔をして沙綾は言った。私は、はっとした。沙綾と離れる日が来るなんて、考えたこともなかった。
「だったら私もYY大学に入る!」
「それはだめ。美月には美月のやりたいことをやってほしい。」
「でも、、」
悲しそうな顔をしている私を真っ直ぐに見て、沙綾は行った。
「距離が離れたとしても、私たちはちゃんと繋がっているよ。
それに、大学に入学するまであと1年間も一緒に過ごせるんだよ。だから大丈夫!」
そう言って、沙綾は微笑んだ。
永遠に続くと思っていた沙綾と過ごす愛しい時間。そんな時間に、期限があることに気付いてしまった。こうしている時にも、タイムリミットが刻一刻と迫ってきている。だったら、最後の一秒、青春終了の合図まで、沙綾と一緒に笑い合いたい。
「そうだね!大丈夫だ!」
と、微笑み返した私は心なしか大げさだった。
季節が色に染まるまで 南まる @yu_728
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