3

「傘とかって、置いてあったりは…」


『しない』


見事なまでに素早く書き込まれた文面が、私の目の前に掲げられる。


「ですよね…」


非常に困った。


一つ屋根の下に、女性と二人、夜を明ける。


高校男児には少々刺激が強いシチュエーションだ。


そんな私を見た彼女は、しばらく悩むような素振りを見せた後、また、ノートに何かを書き始めた。


しゃっしゃっしゃっ


ぽつぽつぽつぽつ


しゃっしゃっしゃっ


ぽつぽつぽつぽつ


鉛筆の走る音と、屋根に打ち付ける雨音が、交互に響き渡る。


耳が、何だかとても心地良い。


濡れる雨は嫌いだが、雨音を鑑賞するのは大好き。


我儘なのかもしれないけど、そう思っているのは、きっと、私だけではないはず。


『雨が止むまで、ここに居ても良い。元々、その為に開けているし。

それに、君以外にも、ここで雨を凌いでいった人は、沢山いるから』


「俺以外にも、って…?」

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