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私の問いかけに、一瞬、彼女の手が止まったように見えたが、先程までと変わらぬ手つきで、流れるように鉛筆を走らせる。


『男の人。君よりも、もっと歳上の』



ー売春してるって、噂の女ー



和樹の言葉が、脳裏を過ぎる。


「……、売春やってるの?」


思わず出てしまった言葉に、慌てて口を塞ぐ。


ーやってしまった…


学校で、噂について和樹と話した記憶が新しいせいか、つい余計な事を言ってしまった。


彼女は私の言葉に眉を顰めると、ノートにまた、何かを書き込む。


『さぁ?』


『気になる?』


そう書いたノートを掲げる彼女の顔には、不敵な笑みが浮かべられていた。


「…うん、気になる。君の事が、知りたい」


もし、あの噂が真実だとして。


それならば何故、彼女は売春をするのか。


七つ下がりの雨に。


そして、彼女は誰なのだろうか。


その全てを、私は知りたい。


『タダじゃ駄目』

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