4

私の問いかけに、一瞬、彼女の手が止まったように見えたが、先程までと変わらぬ手つきで、流れるように鉛筆を走らせる。


『男の人。君よりも、もっと歳上の』



ー売春してるって、噂の女ー



和樹の言葉が、脳裏を過ぎる。


「……、売春やってるの?」


思わず出てしまった言葉に、慌てて口を塞ぐ。


ーやってしまった…


学校で、噂について和樹と話した記憶が新しいせいか、つい余計な事を言ってしまった。


彼女は私の言葉に眉を顰めると、ノートにまた、何かを書き込む。


『さぁ?』


『気になる?』


そう書いたノートを掲げる彼女の顔には、不敵な笑みが浮かべられていた。


「…うん、気になる。君の事が、知りたい」


もし、あの噂が真実だとして。


それならば何故、彼女は売春をするのか。


七つ下がりの雨に。


そして、彼女は誰なのだろうか。


その全てを、私は知りたい。


『タダじゃ駄目』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る