初雨
古民家の中は、想像していたよりも手入れが届いていて、一階は、中央の囲炉裏が特徴的な、茶室のような雰囲気、二階は、バーカウンターを備えた、カフェスタイルの内装となっていた。
軽くシャワーと、着替えの服を借りた私は、案内されるがままに向かった二階で、彼女が淹れた珈琲を飲んでいる。
勢いを強め始めた雨の音と、香ばしい珈琲の香りに包まれながら、何処か現実離れした浮遊感を感じぜずにはいられない。
「…あの、ありがとう。お陰様で、助かった」
とりあえず、感謝の言葉を伝えるが、反応はない。
バーカウンターの向かい側で、椅子に腰を掛けながら、読書をしている彼女は、私をここに連れてくる間も、終始無言だった。
ただ、屋根を打ち付ける雨音だけが、この空間に響いている。
「……、さっきのって、どういう意味?ほら、雨が止まないって」
私はスマホの天気アプリを起動し、彼女に見せる。
「一応、予報では、後一時間ぐらいで止むみたいだけど」
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