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ー『彼女は、売春をしている』ー



何処からともなく流れ始めた、噂。


誰が流し始めたのかは分からないが、つくづく馬鹿らしい、と思う。


この古民家だって、見た感じ、人が住んでいるようには思えない。


そもそも、その売春をしている、と噂の彼女とは、何故雨が降っている時だけしか会えないのだろうか。


しかも、午後四時過ぎに降る雨、という条件付きで。


「そう言えば…」


今の時刻も、丁度、午後四時過ぎ。


図らずも、条件に合致した時刻だ。


しかし、相変わらず、古民家に人の気配は感じられない。


所詮、噂は噂か、と鼻で笑いながら、早々に雨があがる事を期待して、雨中へ踏み出そうとした、その時。


私の頭上に、一本の傘が掲げられた。


「……止まないよ」


その声は、雨音のように、私の中へ、ぽつりぽつりと落ちながら、染み込んでいく。


「七つ下がりの雨、だから」

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