「あぁ、最悪…」

雨で濡れた髪を掻きむしりながら、うだつの上がらない空を見上げる。

予報で雨が降る事は分かっていたが、降水確率から見て、家に着くまで降ることはないだろうと、高を括って傘を持ってきていなかったのが裏目に出た。

まさか、帰宅途中で、雨に見舞われる事になるとは…

運良く、軒下に逃げ込む事で雨を凌ぐ事が出来たが、この様子だと、いつ止んでくれるのかも分からない。

今日は、蒸し暑かった事もあって、薄い肌着の上に、制服の白シャツを羽織っているだけだから、出来ることなら、これ以上濡れる事は避けたかった。

「…どうするかな」

意味のない独り言を吐きながら、辺りを見回した所で、今、雨宿りをしている軒下が、例の古民家である事に、遅まきながら気付く。

自宅までの帰路に、古民家はない。

必死に雨から逃げている内に、少しルートから外れてしまっていたようだ。

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