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「駄目だった。会えなかったのは勿論だけど、そもそも古民家、開いてすらなかったんだよ。相手を選んでるのか、そもそもただの噂に過ぎないのかは分かんないけどさ」


「…俺が行ったって変わんないだろ」


所詮、噂は噂だ。


骨折り損になるのが目に見えてるし、雨が降る中、無駄に濡れるような事はしたくない。


「いいじゃんかよぉ。お礼に今度…」


彼が言いかけた所で、ガタンと、後ろの方で誰かが席を立つ音が聞こえた。


そのまま無言で教室を出ていった彼は、クラスメイトの七下優雨。


目の前で騒々しく話す和樹とは対称的に、物静かな人物だ。


窓際の席で、外の景色を憂う様な瞳で見つめている七下の姿を、良く目にしていた。


「…俺、怒らせたかな?」


「そうなんじゃない?売春とか、下世話な話し、七下君は、苦手そうだし」


「歳頃の男だぞ?あいつだって、済ました顔して、絶対興味あるって。もしかしたら、一人で古民家見に行ったのかもよ」


「どうだか」

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