第69話 これからの予定。
「では、いってまいります」
「うん。お願いね」
俺はそのままギルドへ。ロザリエールさんは明るいうちにもう少しだけ、
ギルドへ到着すると、ジュエリーヌさんはすでに治療のための受付を初めてくれてる。エトエリーゼさんが代わりに俺をみつけて挨拶してくれた。
「おはようございます。ソウトメ様」
「おはよう。エトエリーゼさん、ジュエリーヌさんもおはよう」
ジュエリーヌさんはこっちを見て笑顔だけ。手を止めて応えるような余裕はないみたい。まぁ、すでに10人以上並んでるから、仕方ないんだけどね。
俺はそのまま、受付横の扉をくぐって、支配人室へ向かう。通路を抜けて、支配人室へ到着。ドアを叩くとすぐに返事が来る。
「ソウトメくんかい? 入っておいで」
ありゃ? リズレイリアさんじゃなく、プライヴィアさんが返事してるし。
「おはようございます」
「あぁ、おはよう」
「おはようございます。ソウトメ殿」
あおあもう、完全に丁寧な受け答えになっちゃってるよ、リズレイアさんは。仕方ないか、プライヴィアさんの息子になっちゃったんだもんな。気がついたら、だけどさ。
ソファには、プライヴィアさんとリズレイアさんが並んで座ってる。てことは、俺に向かいへ座れって言ってるんだよな。遠慮なしに座るけどね。
「それで、ソウトメくん」
ソウトメ殿から、ソウトメくんになってる。そのうち名前で呼ばれるようになるんだろうな。
「はい」
「さっきまでね、リズレイアとも話していたんだけどね」
「はい」
「君はいつ、……いや、どれくらいの期間で、行き来するつもりなんだい?」
あ、そういうことか。プライヴィアさんは、『いつ帰ってくるのかい?』って言おうとしたのかも。
俺は
「そうですね。元々俺は、あっちでもこっちでも、6日仕事して、1日休むようにしてました。なのであと5日いたら、夕方一度戻ります。お屋敷で1日ゆっくり休んで、6日治療したら、夕方またこっちに戻ってくる感じですね」
「君の身体が心配だが、それでいいのならしばらくはそうしてもらえると助かるよ」
リズレイリアさんは、ぽかーんとしてる。そりゃそうだよね。彼女はセントレナを知らないかもだから。
「プライヴィアさん、アレシヲンとセントレナの説明、したんですか?」
「あ、あぁ、すっかり忘れてた。あのね、私たちには――」
リズレイリアさんに、走竜の彼女たちの説明をしてくれてるプライヴィアさん。俺はその間に、インベントリから下に敷く布を取り出して、ソファテーブルの上に広げる。
「……というわけなんだよ」
「プライヴィア殿があれほど早く到着したのは、そのような理由があったのですね」
「わかってくれて助かるよ」
「さて、話を進めてもいいですか?」
「あぁ、構わないよ。それで、何を見せてくれるんだい?」
リズレイリアさんもこくこくと頷く。
俺は両手をテーブルの上にかざした。
「これです」
目の前に出現したちょっと大きめな魔道具。
「これは、なんですか?」
リズレイリアさんそっか、この国に住んでるからって見たことないんだっけ。
「あぁ、すみません。説明しないとわかりませんよね。これは前より、『魔石中和法魔道具』と呼ばれてたはずの魔道具です」
「これが、……あら? 『はず』というのは、どういうことでしょうか?」
うわ、リズレイリアさん。めちゃくちゃ頭良いみたいじゃない。ギルドをまとめられるくらいだから、そうじゃないと駄目なんだろうけどさ。
「そうだね。『予想とは違っていた』。そうじゃないかい?」
「はい。ご明察です。俺が持ってる空間属性魔法で格納するとき、便宜上なのかそれともお約束なのかわかりませんが、必ず物の名前が振られるわけです。ただ、そのときに表示されたのが『連続解毒効能魔道具』だったんですね」
「ほほぅ」
「『中和』ではなく『解毒』……」
「そう。リズレイリアとは情報共有をしているんだ。もちろん、ソウトメくんが持ち帰った、
あのときの、どす黒いあれか。そうだった。あれには『
「そうなんです。あの状態の悪素には、俺の解毒が効かなかったように感じました。けれどこいつは解毒の魔法陣が刻まれているかもしれない。そうじゃないと、解毒の名が使われるわけがないんですよ」
「そうだね」
「そこで簡単な仮説ですが。もしですよ。人々の身体に、水を媒介として悪素が入り込むなら、蓄積されていない目に見えないほど、そんな細かい状態の悪素にならある程度は効果があるのかもしれません」
「そうとも言えるね。どうだろう?」
「はい、ただこの場合」
「そう。この魔道具によってある程度悪素を取り除いたはずの水と、何もしていない水をどうやって比べたものか。はたして、魔道具は効果が本当に出ているのか?」
「なるほどですね……」
「あぁ、実に厄介な話だね」
けど、確かめる方法がないわけじゃない。
「二通りの方法を考えてあります。前者は、あの玉座に座っている国王や王妃、王女から貴族に至るまで、ちょちょいとですね」
「そうか。締め上げたら簡単だものね」
「はい。とっ捕まえて、指を見たらわかるんです。これだけ沢山の人を、俺はみてきましたから。ただそれは、前に話した『最後の手段』と同じタイミングになると思うんです」
「そうだね。ロザリ――エールくんが、潜入しているんだったね。泳がせておかないと、彼女の邪魔をしてしまうかもしれない」
慌てて言い直そうとしてるし。プライヴィアさん、いやギルドにおとって、ロザリエールさんは有名人だったのかもしれないね。
「後者は、麻夜という勇者の少女に協力を仰ごうかと思っています」
「そうか。鑑定のスキル」
「え? あの伝説の」
「そりゃそうだよ。ソウトメくんと一緒に連れてこられた少年と少女たちは、勇者だもの」
ですよねー。……俺と一緒にか、俺が一緒にかは微妙に違うかもだけどさ。
「俺には欲しくても現れなかったスキルなんです。勇者になりたいとは想わないけど、鑑定だけはほしかったんです。……あ、そうだ。リズレイリアさん」
「なんでしょう?」
「前にお借りした、あの魔道書。まだありますか?」
「えぇ。ちょっと待ってくださいね」
リズレイリアさんは立ち上がると、彼女の机の横にある壁。そこに書棚があって、奥に隠すようにして置かれてた、見覚えのある分厚い本を持ってきてくれた。
「リズレイリア、これはもしや」
「はい。以前お預かりしましたあの魔道書でございます」
「なるほどねぇ……。これは私たちにも読める者がいなかった。
そっか、これ、プライヴィアさんのだったんだ。
「相変わらず私には読めないのですが、以前と違っていて、あちこち抜けているように消えている場所もあるんですね」
「え? 消えてる? ちょっと見せてもらえますか?」
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