第3話 よるのおはなし

もはや遠き少女時代の思い出だ。

私はベッドの上で、目を開いた。


「やあ、久しぶりだねお嬢さん」

頭の上で懐かしい声がする。


「あら御者さん、久しぶりね」

私は彼を見てにこにこと微笑む。


骸骨の表情はわからない。

しかしとても優しい顔をしているように見えた。


「君は変わらないね」


「あら、あなたに言われるなんて」


二人揃ってからからと笑いあう。


「いい夜だ」


「そうね。素敵な夜だわ」

骸骨が手をのばす。


「行こうか」

「ええ、よろしく」


私はその手をとる。



ぱっ、と私は馬車の上にいた。

私の姿は老女ではなくいつかの少女時代の姿となっている。

あのうさぎも隣に座り、また足をぷらぷらと動かしていた。


「今夜の月も綺麗だ」

御者が骨の馬に合図を送る。

馬が高く啼き声をあげた。


馬車は屋根から浮かび上がり、月へと向かうように夜空を駆けていく。



暗く、煌めく、星々を散りばめた道を私たちは進んでいく。



ずっと遠くて、とても近い場所へと。

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Night tale ~よるのおはなし~ 佐楽 @sarasara554

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