第10話

「石塚さん~!凄い!石橋君と隣の席なんて!」

同じクラスになった須藤さんと中川さんに言われて

「遂にあの計画が実行される日が来たのね!」

って須藤さんが叫んだ。

(あの計画?)

首を傾げたが、直ぐにその計画が「グループ交際計画」だと分かる。

それから須藤さんが中心になって、6人で遊びに行く事が増えた。

マラソン仲間だったことから、連絡係は何故か私になった。

理由は、石橋君や田川君達が、何故か須藤さん達に連絡先を教えたがらなかったからだ。

そして4月が終わる頃

「ねぇ、何で俺の隣が石塚なの?」

小野君に呟かれた。

「あ!私、迷惑だった?」

そう訊くと、小野君は呆れた顔して

「石塚って、健太が好きなんだよね?」

と言われて赤面してしまう。

「だったらおかしいでしょう?」

そう言われて首を傾げると

「あれ?でも石塚さん、健太を振ったんだよね?」

って聞かれて

「え?何の話?」

になった。

すると小野君は頭を抱えて

「マジか!」

と叫んだ。

「ねぇ、あのバカが『俺、今フリーだから付き合わない?』の軽~い感じで聞かなかった?」

そう言われて

「あ、それは言われた。良く分かったね!!」

拍手して言うと、小野君が深くて長い溜め息を吐いて

「それ、マジなヤツだから」

って言い出した。

「え?」

驚く私に

「あいつ、告白した事無いんだよ」

小野君はそう言うと

「だから、本命にどう言えば分からないんだろうな……。聡もあぁだから、基本協力しないだろう?俺からしたら、二人を見ていてもどかしくてさ……」

と、頭をぐしゃぐしゃとかきむしる。

「でも、石橋君が私なんか……」

「あのさ!」

否定しようとした言葉を、小野君の声が打ち消す。

「あいつ、バカでアホですんげぇ最低なんだよ」

友達とは思えない発言に唖然としていると

「でも、たった一人にだけは優しいんだよ」

と続いた。

「それって、何でだと思う?」

そう言われて言葉を失う。

「俺が知る限り、あいつが褒める女の子はずっと一人だけだった」

小野君の言葉に視界が滲む。

「字が綺麗で、本が好きで、可愛い顔をしているのにいつも俯いてて勿体無いって……。俺が知る限り、それに該当する女子って石塚しかいないんだわ」

泣き出した私に

「石塚。健太が好きなら、逃げないで向き合ってあげて」

そう言われて、涙が止まらなかった。

すると

「小野!お前、何、繭花ちゃんを泣かせてるんだよ!」

と、石橋君が飛んで来た。

小野君の胸ぐらを掴んだ石橋君の腕を掴み

「違うの!」

必死に叫んだ。

「違うの……」

泣いている私に、石橋君がそっとハンカチを差し出す。

パンツのポケットに無造作に入っていたのか、少しクシャクシャなハンカチに思わず笑ってしまう。

そして、私は石橋君を真っ直ぐに見つめて、ずっと飲み込んでいた言葉を吐き出す。

「石橋君。実は私も今、フリーなの。付き合ってみない?」

あの日の言葉を石橋君に呟いた。

石橋君は驚いたように目を見開き、それからゆっくりとクシャクシャな笑顔を浮かべて

「喜んで!」

と、私を抱き締めた

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