第9話

2年になって、クラス替えがあった。

石橋君と同じクラスになり、名前の順で石橋君と隣の席になった。

その時、後ろの方から

「田川君、田川君、背が高いね。身長いくつ?」

って声が聞こえた。

振り向くと、田川君好みの小動物系女子が話し掛けている。

田川君の顔を見る限り、悪い気はしていなさそうだ。

すると

「おっ!聡に新しい春が来たか?」

って石橋君が呟いた。

「え?」

「あいつさ、最近彼女と別れたんだよね」

こっそり石橋君が呟く。

「え!そうなの?長かったよね?」

「ん~、3年かな?」

「え~!どうして?」

私が記憶している限りでは、田川君の前の彼女は可愛くて性格も良い子だった。

「なんかさ、女子校に行って性格が変わったらしい。学校に迎えに来て欲しいとか、彼氏なら部活より自分を優先するのが当たり前じゃない?とか毎日言われて、うんざりしたらしいよ」

「あ~、田川君。自由人だもんね」

「ちなみに、俺も今はフリーなんだ」

笑顔で言われて

「え!珍しいね」

って思わず驚いた。

「ねぇ、繭花ちゃん。俺と付き合ってみない?」

にっこり微笑んで言われて、一瞬真に受けそうになる。

「はいはい。どうせすぐ、綺麗な彼女が出来るんでしょう?」

と流してしまうと

「そっか……俺、そう見えてたんだ……」

って、石橋君がポツリと呟いた。

「あっ……ごめん。私、失礼だったよね」

慌てて謝ると、石橋君は小さく笑って

「ぜ~んぜん、繭花ちゃんは気にしすぎ」

そう言って、私の頭を優しく撫でた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る