姫様のプレゼント大作戦!⑤
「そろそろ帰りましょうか」
「ええ⋯⋯」
祭りを満喫した俺たちは、すっかり夕暮れ色に染まった道を少し距離を空けて歩いて行く。
ふと隣を歩く姫様を見ると、無意識だろうか、彼女は自らの耳元をしきりに気にしている様子で、俺がプレゼントしたイヤリングに触れていた。
そんな姫様の姿を見て、上がりそうになる口元を必死に抑え、平然を装う。
——なんだかんだ言いつつも、気に入ってくれたんだな。⋯⋯それに、夕日を浴びる横顔がすごく⋯⋯綺麗だ。
夕焼けをたっぷりと浴びた姫様の金色の睫毛は、キラキラと光を反射して輝いていた。その光景に目がチカチカと眩む。
すると、ジーッと横顔を見つめる俺の視線に気付いた姫様は、此方を向いて頬を膨らませた。
「レオ、さっきから何なんですっ?」
「ふふっ⋯⋯なんでもございませんよ」
可愛らしい姫様の反応に、思わず笑みが溢れる。
「もうっ! 笑っているではありませんか!」
「姫様の気のせいですよ」
ここに来るまではあんなにも憂鬱だったのに、まるでその事が嘘だったように、姫様と2人でくだらない事で言い合いながら歩く帰り道は楽しかった。
✳︎
城に着くと、辺りはしんと静まり返っており、廊下にはぼんやりとした灯りがちらほらと見えるだけであった。
——なんだ、この妙な静けさは⋯⋯? ⋯⋯まさか、また盗賊が入ったのか!?
先程までの和やかな雰囲気から一転して、ぴんと空気が張り詰める。
「姫様、私から決して離れないで下さい」
そう言って俺は、彼女を庇うように前に立ち、懐に忍ばせていた短剣を手に取って、握りしめた。
「レオ⋯⋯⋯⋯」
しかし、そんな俺の言葉に、姫様はなんだか微妙な顔をしており、その事に多少の引っかかりを覚えたが今はそんな場合では無いと、構わず彼女の手を引く。
コツコツと静まり返る廊下に、俺と姫様の足音だけが響いた。
——春告祭の短い間に、二度も盗賊に入られるとは情けない。今後は城の警備をもっと強化しなければな⋯⋯。
そう思いながら侵入者がいるであろう、唯一、扉から光が漏れ出ている部屋を目指す。
そこには数人が潜んでいる気配がして、出来る限り息を殺して近づいた。
出来ることなら、姫様を安全な城の外へと逃したいが、何処に奴らが潜んでいるかもわからないところで彼女を1人にするのは危険だ。
それなら、俺の側にいた方が何倍も安全である。
部屋に向かう途中、これから起こるであろう戦いに備えて、壁に飾ってあった剣をすらりと抜いた。
「あっ⋯⋯! レオ、それは⋯⋯!」
そんな俺を見て、姫様は何故か焦っているようだ。
「? 姫様、お静かに。ご不安なのは分かりますが、貴女の事はこの私が絶対にお守りいたしますのでご安心ください」
「レオ⋯⋯⋯⋯」
「さ、姫様は私の後ろに。すぐに終わります。⋯⋯どうか、私を信じてください」
不安に揺れる姫様の瞳を見て、俺は彼女を安心させるように、出来るだけ優しく言った。
そして、ごくりと息を飲み、バンっと勢いよく扉を開け放つ。
しかし、そんな俺を待っていたのは予想だにしなかった光景であった。
姫様、婚活中。 みやこ。@コンテスト3作通過🙇♀️ @miya_koo
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